しんぶん赤旗

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日本共産党

2018年6月27日(水)

主張

介護保険の利用

「使わせない」の姿勢を改めよ

 安倍晋三政権が公的な介護費用を無理やり抑え込むため、軽度者が利用するサービスを中心に「使わせない」動きを強めています。今月半ば閣議決定された経済財政運営の基本方針(「骨太の方針」)や、先月まとめられた財務省の財政制度等審議会の建議では、利用制限を狙った制度改変の項目がいくつも記されました。10月からは生活援助の回数を事実上制限する仕組みまで開始しようとしています。介護現場の実態をあまりにも無視した乱暴なやり方です。国民の願いに反する改悪を加速することは、やめるべきです。

「重症化」を招く危険

 今年の「骨太の方針」は来年秋の消費税増税と一体で社会保障費大幅カットを打ち出し、とくに医療・介護を削減の標的にして国民の負担増や給付減を次々と盛り込みました。介護分野では、「ケアプランの作成」「軽度者への生活援助サービス」などの見直し・検討を項目に挙げています。

 「骨太の方針」に先立ちまとめられた財政審の建議では、より具体的な内容を示しています。現在無料のケアプラン作成は「利用者負担の導入」を求めるとしています。軽度者については要介護1・同2の「生活支援」(掃除や調理など)を介護給付の対象から外すことを要求しています。いずれも利用者と家族を直撃する中身です。

 ケアプランは利用者がどのようなサービスをどの程度の回数で受けるかを決める計画です。その作成を有料化することは、新たに介護保険を利用しようとする人には大きなハードルとなります。

 軽度者についても深刻な内容です。すでに要支援1・同2の人の訪問・通所介護については介護給付の対象外にされ、昨年度までに市区町村が実施する「総合事業」に丸投げされています。国が直接責任を持たなくなったことで、自治体によっては、専門職によるサービスを無資格者に置き換えたり、そもそも担い手となる事業者がいなかったりするなど矛盾が次々と噴出しているのが実態です。そんな中で、要介護1・2の生活援助まで介護保険から外し「総合事業」に移すことを迫るなど無謀という他ありません。

 10月からは、訪問介護の生活援助で、利用回数を厳しくチェックし「過剰」とされた利用者のケアプランを自治体に設けられた会議が検証する仕組みが始まります。必要なサービスが削減されかねないと懸念の声が上がっています。

 社会保障費削減ありきで、必要な医療・介護の公的支出を抑えるやり方は大問題です。安倍政権が強行した相次ぐ介護改悪は、特別養護老人ホームの入所条件を要介護3以上に厳格化するなど、「軽度者切り捨て」が際立っています。軽度者が必要なサービスを利用できなくなれば、早期に適切な支援が受けられなくなり、「重症化」を招く事態を広げる危険があります。利用者と家族の安心を脅かす改悪はただちに中止すべきです。

安心の仕組みの充実こそ

 ドイツは最近、介護保険を改定し軽度者への給付を拡大しました。日本と制度の違いもあり単純比較はできませんが、「軽度重視」の流れは注目を集めます。介護保険料を負担しながら、いざというとき使えない制度では国民の信頼は得られません。安心の介護の仕組みを拡充することが必要です。


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