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2018年6月25日(月)

給付制奨学金

“資産は全部見せよ”

現場怒り「金の延べ棒あるわけない」

 国の奨学金制度を担う「日本学生支援機構」が、返済不要の「給付制奨学金」の申請者に資産の申告を求めています。世論に押されやっと始まった制度のはずが、教育現場の怒りをかっています。(芦川章子)


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(写真)日本学生支援機構が出した資産申告を求める文書

申請者に要求

 「なぜ、ここまでさらけ出さないといけないのか。みせしめ、いじめですよ」

 埼玉県の高校で奨学金申請手続きを担当する教員の林さん(仮名)は、せきを切ったように怒りをはき出します。

 同機構から通知が学校に届いたのが6月初旬。住民税非課税などを証明する今までの書類にくわえ、あらたに「資産の申告書」の提出を求めています。

 通帳のコピー、金・銀延べ棒の有無、タンス預金、ローン…。書類には「虚偽が判明したときは、全部を一括で返金いただく」とあります。書類は学校をへて機構へ提出します。

 「先日も保護者から電話があって。『先生、これ、出さないといけませんよね』とひかえめに聞くんです。機構は『金を出してやるんだ。全部見せろ』と言わんばかり。そもそも金の延べ棒のある家庭が申請するかと」

 生徒の困惑も「ひしひしと感じる」という林さん。家計や親の苦労もわかる年齢です。日々の生活だけで精いっぱいという家も少なくありません。生徒には「それでも申請するか」を保護者と話し合うよう伝えています。

 現在、給付制奨学金の対象は全国の生徒数のわずか2%。選考は各高校に任されています。林さんの学校は3年生だけで約240人。有利子、無利子の奨学金などすべての手続きを林さんが一人で担っています。

 研修もない、次々と機構からくる手続き変更のファクス…。授業や部活顧問の合間をぬい、連日の残業で何とかこなしています。「生徒と向き合う」という本来の仕事も削られています。

 全日本教職員組合(全教)には全国の教職員から同様の怒りが寄せられています。

 全教中央執行委員で高校教育担当の波岡知朗さんは「対象者が少ないわりに業務量が多い。生徒たちの家計も比べなければならない。『学校のやることなのか』という声は多い」。資産申告については「生活保護バッシングのよう。申請をためらわせる」と批判します。

 資産申告の義務付けについて機構は「給与等の収入金額を確認しただけでは、家計状況を判断できない」と説明。波岡さんは「収入申告だけで十分。そもそも枠が少ないからこうなる。対象者を広げるべきです」と強調します。

 異常な高学費、強引な返済計画に多額の延滞金―。奨学金制度が“教育ローン”と化すなか、返済できず自己破産する人は急増しています。16年度は3451人と過去最多です。

 林さんはいいます。

 「大企業減税など経団連の利益ばかりで、貧困と格差は広がっている。社会の根幹が壊れかかっている。誰もが安心して学べる制度へ、一刻も早く転換すべきです」


 給付制奨学金 2018年度から開始。進学先や下宿の有無に応じて月額2万~4万円を給付。成績優秀者、住民税非課税世帯などの要件があります。対象者は全国で1学年あたり限定2万人。


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