しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

2018年6月12日(火)

きょうの潮流

 なぜ、彼の命が奪われなければいけなかったのか。心のなかで反復してきた問いかけ。時が過ぎても、答えは見つかっていません▼歩行者天国にトラックで突っ込んだ男が通行人を次々とナイフで刺していく―。東京・秋葉原で7人が死亡し、10人が重軽傷を負った無差別殺人事件から10年がたちました。当日の8日に現場を訪れた犠牲者の友人が、ぬぐいきれない思いを語っていました▼「誰でもよかった」。内にためた激しい不満や憎悪を爆発させ、見ず知らずの人たちにぶつけた加害者。捨て鉢な暴力の嵐に巻き込まれた被害者。節目となった事件が改めて論じられるなか、またも同じような惨劇がくり返されました▼走行中の東海道新幹線で突然なたを手にした男が女性を切りつける。制止しようとした男性も襲う。乗客3人を殺傷したとして逮捕された22歳の容疑者は「むしゃくしゃしてやった。誰でもよかった」と供述で▼容疑者は親との折り合いが悪く、家出をくり返していたといいます。施設で過ごしながら定時制高校を卒業後、職業訓練校で資格をとり機械修理会社に就職しましたが、1年ほどで退職。「生きている価値がない」「死にたい」と、たびたび口にしていたそうです▼秋葉原の事件を起こした派遣社員も親や周りとの人間関係、自分を受け入れてくれない社会へのいら立ちを募らせていました。人生に希望をもてず、みずからの存在を否定する。やみくもな殺意を心に巣くわせる社会とは。問いかけは今もつづきます。


pageup