しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

2018年5月22日(火)

低投票率で現職再選

ベネズエラ大統領選 野党はボイコット

 南米ベネズエラで20日、大統領選が実施され、中央選管は現職のマドゥロ大統領(55)が勝利したと発表しました。就任は来年1月の見込みで、任期は6年間です。

 開票率92%で、マドゥロ氏は、約582万票で得票率67%。主要野党は正当性に欠けるとして選挙をボイコットしましたが、その制止をふりきったファルコン前ララ州知事は約182万票、21%でした。

 投票率は約46%にとどまり、過去3回の大統領選の平均79%を大きく下回りました。

 今回の選挙は、主要野党のリーダーらが汚職などを理由に立候補できず、野党連合「民主統一会議」の統一候補も立てられないもとで行われました。

 中南米の主要国や米国、欧州連合なども選挙の正当性を問題にし、選挙結果を認めないとしています。

 マドゥロ氏は、「憲法にもとづく権力行使のサイクルを完了した」「民主主義の勝利だ」と述べ、国民和解を訴えました。

 ファルコン氏は、与党が有権者に圧力をかけていたとして、「選挙結果を認めない」と強調しました。

 ベネズエラでは、外貨不足のため輸入を大幅に縮小し、国民は超インフレや食料、医薬品不足に直面しています。すでに100万人を超える国民が近隣諸国に逃れていますが、マドゥロ氏は「人道危機は存在していない」と強弁しています。(松島良尚)


解説

政権運営ますます困難に

 昨年3度の選挙で不正疑惑がつきまとったマドゥロ氏が今回の選挙の正当性の証しとして重視したのは高い投票率でした。

 与党は投票所の近くに「赤い地点」と名付けたいわば検問所を設置。食料配給などに用いる「愛国カード」の提示を有権者に求め、スキャナーで読み取りました。与党側は、有権者の自発的意思といいますが、露骨な圧力でした。

 それにもかかわらず、投票率は過去の選挙時から大きく低下。マドゥロ氏に対する有権者の拒絶は覆い隠せません。政府非難により昨年8月に解任されたオルテガ前検事総長は、「国民は明確なメッセージを世界に送った」と指摘しました。

 マドゥロ氏の政権運営の困難は今後いっそう増大すると予想されます。

 外貨獲得の源泉である石油生産は、設備更新のおくれなどから減少し続け、過去30年で最低水準に陥っています。

 さらに、米石油大手コノコフィリップスが、前政権時代の自社設備の国営化にともなう国際的な賠償判決に沿ってベネズエラの在外石油施設を差し押さえたことも大きく影響します。他の債権者が同様の差し押さえ手続きに入る動きもあります。

 選挙結果を認めないとする中南米の主要国や米欧などがベネズエラに新たな制裁措置をとる可能性もあります。同国の国際的な孤立が深まるのは必至です。

 国民を苦しめるインフレは、物不足や通貨発行量の急増のため、4月末時点の前年同期比で1万3779%を超えました。マドゥロ氏が周辺諸国の人道支援を拒絶するもとで、国民の困窮が深まります。

 野党は昨年来、正当性に欠ける選挙への参加の是非をめぐって弱体化していました。しかし、今回の選挙結果が示した政府批判の高まりを受け、再統一をめざす動きが浮上しています。(松島良尚)


pageup