しんぶん赤旗

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日本共産党

2018年5月19日(土)

主張

TPP11採決強行

国会審議をそっちのけの暴挙

 安倍晋三自公政権は18日、米国を除く環太平洋連携協定(TPP)加盟11カ国による新協定(TPP11)の批准承認を衆院で強行し、関連法案を含めて今国会での成立を急いでいます。衆院外務委員会での新協定の審議はわずか6時間です。「森友・加計」問題などで国政の異常事態が続く中、農業や国のあり方に関わる重大な協定の批准を、まともな審議もしないで強行するのは断じて許せません。

多国籍企業優先のルール

 TPP11は、トランプ米政権の離脱で発効できなくなったTPPを一部を除いて復活させたものです。施行の条件をTPP11の発効に合わせた関連法案は、ほとんど審議されていません。

 TPPは、多国籍大企業や国際競争力の強い国の利益を優先し、関税の原則撤廃や投資の自由化、規制緩和を押し付け、経済主権や食料主権を侵害するものです。日本は農業が壊滅的な打撃を受け、食の安全や医療、雇用、地域経済も脅かされるため、広範な団体・個人が反対してきました。主導した米国でトランプ政権が離脱したのも、圧倒的な国内世論の反対があったからです。

 TPP11はTPPの一部の条項が凍結されたとはいえ、多国籍企業の利益を最優先し、大多数の国民を犠牲にする本質を変えません。日本にとっては米国からの市場開放・規制緩和圧力も加わり、TPP以上に影響が広がると指摘されています。TPPで受け入れた米国を含む乳製品の輸入枠はTPP11でも維持され、米国産以外で満たされると想定されます。牛肉や豚肉でも、カナダなど米国産以外の対日輸出の関税が大幅削減されるため、米国の農業団体の不満を背景に、トランプ政権が対日圧力を強めるのは必至です。

 4月の日米首脳会談では、2国間交渉で圧力を強めるトランプ政権の強硬姿勢が浮き彫りになりました。合意した日米貿易通商協議が、日本にTPP以上の輸入拡大を迫る場になるのは目に見えています。安倍政権はTPP11で米国の圧力を防げるかのように言いますが、米国に対日要求の出発点を与えることになるのは明白です。

 政府はTPP11による農業生産の減少は「ない」とする試算を発表し、関係者から厳しい批判が出ています。食の安全や投資家対国家紛争解決(ISDS)条項への懸念も解消されず、情報開示や説明はまったく不十分です。

 安倍首相は、TPP11で「保護主義」を防止し、「自由貿易」を守るといいます。「成長戦略の柱」だともいいます。しかし、その路線は一部の大企業を肥え太らせ貧困と格差を広げるだけであり、「99%」を犠牲にした「1%」のための戦略です。多国籍企業の活動の自由を拡大するルールの押し付けは、各国で貧困と格差を拡大しています。経済主権や食料主権を尊重する平等・互恵の貿易ルールを目指すべきで、そのためにもTPP11の批准は断念すべきです。

強行を許さない世論を

 「拙速な批准はやめよ!」「徹底した審議を」―。「TPPプラスを許さない!全国共同行動」など農民団体や市民団体が国会内外で行動を広げています。疑惑の隠ぺい、改ざん、ねつ造などで沸騰する国民の怒り、たたかいと結び、TPP11の批准を阻止する世論を集中することが急がれます。


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