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2018年5月18日(金)

奄美・沖縄など4島の世界自然遺産

北部訓練場が障害に

勧告機関が評価書

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 「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」(鹿児島県、沖縄県)の世界自然遺産としての「登録延期」を勧告している国際自然保護連合(IUCN、国連教育科学文化機関〈ユネスコ〉の諮問機関)は評価書を公表(15日)し、北部訓練場の存在により指定範囲が「極めて断片的」で、生物学的な持続可能性の基準に合致しないと指摘しました。環境団体や地元住民からも、政府の拙速な推薦案に困惑の声が上がっています。

 評価書は、日本政府の推薦地について、自然環境や生物多様性が維持されていることを高く評価しながら、沖縄本島北部にある米軍北部訓練場の返還地が含まれていないことなどを疑問視。訓練場の返還地も管理計画に入れることや、固有種が生息する現存の北部訓練場に適切な管理が及ぶよう調整メカニズムを設けるなどの提案をしています。

 筑波大学大学院の吉田正人教授(世界遺産専攻)は17日の会見で、IUCNの勧告が妥当であり「不十分なままに(遺産)登録をすれば後が大変になる」と指摘。石見銀山が2007年に「政治力」で拙速に自然遺産に登録されて保護・観光対策に不備が生じたことを紹介し、日本政府に対し「勧告を受け止め、修正して再提出すべきだ」としています。

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(写真)米軍北部訓練場(沖縄県提供)

 日本自然保護協会は同日、今回の勧告について日本政府や関係機関に向けた提言を発表。IUCNの勧告受け入れと対策措置を講じること▽遺産登録に関する適切な情報公開▽市民参画と地域に即した管理体制の構築▽世界遺産地域・緩衝地域の範囲見直し―を求めています。

 北部訓練場の面積は16年12月に約4千ヘクタールが返還され、3千ヘクタールが残存しています。中川雅治環境相は申請の取り下げは「検討中」としています。


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