しんぶん赤旗

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日本共産党

2018年4月24日(火)

高橋議員に聞く 「働き方」一括法案

審議入り阻止で野党団結

データねつ造、過労自殺隠しで追い詰める

 安倍内閣は、改ざん・隠ぺい問題で追い詰められながらも、「残業代ゼロ制度」(高度プロフェッショナル制度)などを盛り込んだ「働き方改革」一括法案の審議入りをねらっており、これに反対する野党との攻防になっています。法案をめぐる情勢や対決点について、日本共産党の高橋千鶴子衆院議員に聞きました。(聞き手・田代正則)


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 ―「働き方改革」一括法案は6日、国会に提出されました。

 高橋 野党が力を合わせて労働時間データや是正指導に関するねつ造や隠ぺい疑惑を追及し、審議入りを阻止しています。

 まずデータねつ造問題がありました。

法案論拠が破綻

 安倍政権は、裁量労働制拡大や高プロ導入で過労死が増えるという批判をかわすため、“裁量労働制で働く労働者は一般労働者より労働時間が短いという調査結果がある”と主張しました。

 しかし、比較できないデータを恣意(しい)的に加工し比較していることが明らかになり、他のデータにも300カ所を超える異常値が発覚し、データ撤回と裁量労働拡大を法案から削除する事態に追い込まれました。法案の論拠が破綻したもので、野党や過労死遺族、労働者のたたかいによる成果です。

 ―野村不動産の違法な裁量労働制適用に対する「特別指導」が問題になっています。

 高橋 これは、一括法案のもう一つの論拠とされたものです。

 安倍首相は、「特別指導」をアピールし、“違法行為はきちんと監督指導するから大丈夫”と強調しました。私が「裁量労働制は長時間労働の隠れみのになる」と追及したときも加藤勝信厚労相は、「野村不動産をはじめしっかり監督指導している」と答えました。

 ところが、マスコミ報道によって野村不動産で過労自殺事件が起こっていたことが分かりました。過労自殺を伏せて「しっかり指導」だけを強調し、あざむこうとしていたのです。

 野村不動産では、裁量労働制を対象外の労働者に適用し、過労自殺まで起きていた。ところが、それを隠して法令にもない「特別指導」をしたことだけを発表したのです。本当は遺族による労災申請こそが全社的違法が発覚する端緒であることは疑いの余地はありません。

 「特別指導」は、口頭のみの指導で指導書もなく、改善結果の報告も求めないものでした。勝田智明東京労働局長(当時)が「お宅らの会社に是正勧告してもいいんだけど」と記者をどう喝したのは、追及されて苦し紛れに出た言葉でした。

過労死と認める

 ―野党などの追及で過労死を認めました。

 高橋 厚労省は昨年、加藤厚労相に特別指導について3回、報告しています。その報告書はほとんどが黒塗りで、過労自殺があったことも一切認めませんでした。しかし、野党が追及し、遺族が公表に同意するファクスを送り、過労死の事実はついに認めざるをえなくなりました。

 さらに、私の質問に加藤厚労相は、残業時間を定めた三六協定を超える長時間労働があったと認めました。野村不動産は三六協定に違反していたと公表しており、黒塗り報告書の中に三六協定(特別条項)は月80時間と明記していました。これで長時間労働は否定できなくなったのです。

 違法な長時間労働があり、過労自殺があれば、企業名公表の基準に該当する可能性が極めて高いといえます。しかし、そうはしたくないので「特別指導」にしたという疑惑がいっそう深まりました。

 公正公平であるべき労働行政をゆがめ、国会と国民をあざむく重大問題の解明なしに、法案審議などできないことは明白です。

野党結束し追及

 ―野党が結束して追及しています。

 高橋 野党はデータねつ造問題以来、合同ヒアリングを継続的に行い、結束して政府を追及しています。

 他の野党議員が、私の質問を引用して質問したり、私も他党議員の資料を使わせてもらうなど、力を合わせて追及しています。各党それぞれ政策がありますが、高プロは絶対に許さないことで一致しています。

 厚労省はデータの裁量労働制部分を撤回しましたが、残る一般労働者の部分も精査を続けています。また、安倍首相が指示した「新しい手法での裁量労働制の実態調査」はこれからです。さらに、私の質問に厚労省は、専門業務型の裁量労働制と高プロは対象が一部重なると認めました。

 つまり、新しい実態調査が終わらないうちに、高プロを導入する法案など審議できるはずがないのです。

 森友・加計問題など数々の改ざん・隠ぺい問題にまみれる安倍内閣の退陣を求める運動と一体となって、私たち野党は結束し、過労死遺族や労働組合など幅広い国民と力を合わせ、過労死や長時間労働を増やす改悪を絶対に許さないため頑張りぬきたいと思います。


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