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日本共産党

2018年3月6日(火)

論戦ハイライト

過労死の危険が増大

「裁量労働」 山下副委員長が追及 参院予算委

事前に乱用防止が難しい

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(写真)安倍首相らに質問する山下芳生議員(右)=5日、参院予算委

 日本共産党の山下芳生副委員長は、5日の参院予算委員会で、裁量労働制の実態を示しながら、「残業代ゼロ制度」である高度プロフェッショナル制度(高プロ)についても撤回するよう求めました。

 山下氏は、野村不動産で全社員約1900人のうち営業担当者ら約600人に裁量労働制が違法に適用され、50代の男性社員の過労自殺が労災認定されたことを追及し、実態をつかんでいるのかとただしました。

 山下 裁量制の違法適用は何件あったのか。

 加藤勝信厚労相 平成29(2017)年の裁量制にかかわる是正勧告は130件だ。

 是正勧告の総数だけで、対象業務の違法適用にかかわる勧告件数を答弁できない加藤厚労相に対して、山下氏は、「野村不動産のような実態はつかめていないということだ」と批判しました。

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 山下氏は、野村不動産への特別指導のきっかけは遺族の労災申請だったことをあげ、監督指導は、犠牲者が出た後ではないかと追及。加藤厚労相は、「さまざまな情報をいただいている」としか答えられませんでした。

 山下氏が「特別指導の着手日など時系列を報告すべきだ」と求めたのに対し、加藤厚労相は、「申し上げられる限り示したい」と答えました。

 山下 裁量制は、行政が事前に乱用を防ぐことが難しい。

 安倍晋三首相 労働基準監督署が適切な指導をすることが大切だ。

 山下氏は、「事前チェックが難しいことは、新たにつくろうとしている『残業代ゼロ制度』についても同じだ」と指摘しました。

NHKずさんな時間管理

 山下氏は、過労死したNHK記者、佐戸未和さんの父親、守さんが「過労死の事実をふまえて、二度と未和のような過労死が発生しないようにしてもらいたい」と語っていることにふれ、労働実態を告発しました。

 家族、弁護士の調査で、未和さんが2013年7月に亡くなる1カ月前の時間外労働は209時間で、「徹夜状態でほぼ24時間働いていたこともあった」と指摘。「なぜ長時間、休日なしの労働を止められなかったのか」とただすと、NHKの上田良一会長は、「当時、記者には『事業場外みなし労働時間制』が適用されていた」と答えました。

 「事業場外みなし労働時間制」は、事業場外での業務など労働時間の把握が困難である場合、あらかじめ決めた時間を労働時間とみなす制度で裁量制と同じ仕組みです。

 山下氏は、「みなし労働時間制は、労働時間の把握・管理が極めてあいまいになる」と批判。実際にNHKでは、本局に行ったときに自己申告で記録し、1カ月に1回、報告するなどの事例があるとして、「これでは労働時間の把握はもちろん、疲れ切ったとき、後になってから実態がわかる。まともな健康管理はできない」と批判しました。

 山下 事業場外みなし労働時間制で、労働時間を把握していないことに罰則はあるのか。

 山越敬一労働基準局長 罰則は定められていない。

 山下氏は、「使用者が労働時間を把握しなくてもいい。長時間労働がまん延するのは当たり前だ」と指摘。未和さんの母親、恵美子さんが「みなし労働時間制を悪用した労務管理の怠慢による人災」と指摘したことを示し、「これでは長時間労働にブレーキがかからない」と批判しました。安倍首相は「労使双方が話し合って決める。かい離は指導していく」と答えるのが精いっぱいでした。

「みなし労働」共通の問題点

 山下氏は、なぜ裁量制など「みなし労働時間制」が長時間労働を招き、過労死の危険を増大させる危険があるか、二つの問題から追及しました。

 一つは、労働者に業務の時間配分の裁量はあっても、業務量にかかわる裁量はないことです。

 山下 帰ろうとしている労働者に、上司が「この業務をしてくれ」と追加業務を依頼することは違法か。業務を断る裁量はあるか。

 加藤厚労相 適切な業務量が設定されていくことが必要だ。

 加藤厚労相は、労働者に業務量を断る裁量がないことを否定できませんでした。

 もう一つは、「みなし労働時間」と実労働時間のかい離が是正されにくい問題です。

 山下氏は、ある大企業では入社1年目から裁量制とされ、自主申告型のタイムシートを出し、裁量手当の月10時間分を超えないように自主申告するよう指示されていると批判。「これにも法律の罰則がない」として、「これだけ深刻な問題があるもとで、裁量制の対象拡大は絶対にやってはならない。ましてや同じ懸念がある、『残業代ゼロ制度』の高プロは、導入すべきではない」と強調しました。


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