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2018年2月24日(土)

きょうの潮流

 ことし生誕900年とされる人が2人。平清盛と西行です。清盛は貴族から権力を奪い、次の武家支配の時代につなげました。西行は「新古今和歌集」入集最多の歌人です▼生きた道はまったく違いましたが同い年。出家前の西行は上皇を警護する北面の武士。清盛も祖父と父が同職に任じられました。のちのち両人の関係を想像していくつも小説が書かれました▼「願はくは花の下にて春死なん/そのきさらぎの望月(もちづき)の頃」。西行の有名な歌です。花はここでは桜。釈迦(しゃか)が亡くなった旧暦2月15日ごろ、あの世へ旅立ちたいという願いをよんだものとされます▼この歌にはどこかできすぎた感じがないでしょうか。桜と満月の舞台装置。釈迦の命日と同月に亡くなる僧侶。後に正岡子規は西行の歌を「いつはりのたくみ」と批判しました。評論家の加藤周一さんも「『古今集』以来の月なみの主題」と手厳しい▼ただ、今に伝わる西行約2300首の中には自然を素直にめでた歌も多い。西行の目は戦乱の悲惨さにも向けられています。「死出の山越ゆる絶え間はあらじかし/なくなる人の数続きつつ」と▼力でのし上がった清盛と異なり、西行が動乱の時代に武士を捨て、花鳥風月の貴族文化に身を寄せたのはなぜか。殺し殺されることを嫌ったからではなかったか。やはり桜には新しい命の象徴こそふさわしい。厳寒と豪雪に苦しめられたこの冬も、ようやく終わりが近づきました。伊豆からは河津桜が三分咲きとの開花情報が寄せられています。


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