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日本共産党

2018年2月21日(水)

主張

医療・介護の新報酬

現場の疲弊さらに広げるのか

 公的医療保険の「価格」である診療報酬の2018年度からの改定内容を厚生労働省がまとめました。同省は、同時に改定する介護保険の報酬についても先月末決めており、4月からの医療・介護の「価格」が出そろいました。社会保障費削減を進める安倍晋三政権は18年度予算案で診療報酬全体はマイナス、介護報酬全体は「微増」の改定率に抑え込みました。その結果、改定された二つの報酬の具体的内容は、現場が抱える困難の打開には程遠く、矛盾をさらに広げるものになっています。国民にも医療・介護の提供者にも新たな苦難を強いることは重大です。

安全・安心を脅かす危険

 診療報酬は、外来、入院など医療行為について医療機関に支払われる単価です。介護報酬もサービス利用の単価として介護事業者の収入となります。診療報酬は2年に1度、介護報酬は3年に1度の改定が原則で、18年度改定は6年に1度の同時改定にあたります。

 安倍政権内では、同時改定を医療・介護の公的負担を削減する機会にしようと二つの報酬全体の削減を狙う動きが強まりましたが、現場から厳しい批判がわき上がり大幅なマイナス改定の強行はできませんでした。しかし診療報酬は薬価を含む全体ではマイナス、入院など医療技術分は若干プラス、介護報酬もややプラス改定にとどめたため、ここ十数年来の連続的な報酬引き下げでもたらされた「医療崩壊」「介護難民」などの疲弊や困難を解決する規模には全く届いていません。むしろ報酬の具体的中身をみると、新たな矛盾と危機を進行させかねません。

 その一つが、入院病床の再編・統合を推進するための診療報酬の配分の変更です。看護体制の手厚い「患者7人に看護職員1人」の病床は医療費がかかり過ぎているとして、看護職員の少ない病床へ転換を加速させる方向などを盛り込みました。入院患者を「重症度」で絞り込む仕組みも強めます。これは患者の選別につながる恐れがあり、きめ細かな医療をめざす医療機関の経営にも深刻な打撃になります。実情をみない強引な政策誘導はやめるべきです。

 介護報酬については、「軽度者」を中心にした利用制限にいっそうの拍車がかかります。訪問介護の生活援助では一定の回数を超える利用を厳格にチェックする仕組みを導入します。デイサービスについても一定規模以上の施設の報酬を引き下げました。サービスの低下を招くことが懸念されます。

 介護利用者の「自立」を促進した事業者への報酬を増額したことは、高齢者が無理な「自立」を強要されたり、自立機能回復が困難な人がサービスから締め出されたりする危険を強めるものです。

 医療・介護の安全と安心を脅かす新たな報酬を、現場に押し付けることは許されません。

国民の負担軽減とあわせ

 国民が切実に願う医療・介護の再生・拡充には報酬の大幅アップが不可欠です。その際、患者・利用者の負担増に直結させない軽減策をすすめることが必要です。

 安倍晋三政権のすすめる社会保障費削減路線にストップをかけることが急務です。軍事費などの無駄を削り、大企業・大金持ちに応分の負担を求めるなど必要な財源を確保し、暮らしを支える政治にしていくことが求められます。


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