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日本共産党

2018年2月14日(水)

主張

困窮者の住宅火災

悲劇生まぬ抜本対策こそ急務

 札幌市にある生活困窮者支援を目的にした民間団体運営の共同住宅が全焼し入居者11人が亡くなった先月末の火災は、日本の「住まいの貧困」の実態を改めて浮き彫りにしています。身寄りのない低所得高齢者らが住む施設などで、多くの人命が奪われる火災は毎年のように発生しており、事態は深刻です。悲劇を繰り返さないため、国や自治体が生活困窮者に安全・安心の住宅と生活を保障する抜本対策を講じることが急務です。

行き場を失った人の命が

 40代から80代の男性8人女性3人が犠牲になった札幌市の共同住宅火災から2週間―。消防の調べなどで防火・避難体制の弱さや建物の構造上の問題が明らかになっています。旅館を改造した築約50年の木造建物には自動火災報知機などはありましたが、スプリンクラーは未設置でした。2階の非常口も「避難はしご」しかなく高齢者が逃げるには困難だったとみられます。惨事につながった原因・背景の徹底的な検証が必要です。

 安全性が脆弱(ぜいじゃく)な住宅で多くの人が命を落とす火災は各地で後を絶ちません。▽2015年5月、川崎市の簡易宿泊所で生活保護利用者など11人が死亡▽17年5月、北九州市のアパートで日雇い労働者ら6人が死亡▽同年8月、秋田県横手市のアパートで生活保護利用者ら5人が死亡―。そのたび安全強化がいわれ一定の対応がとられてはいるものの、痛ましい事故がなくせないことは深刻です。

 背景にあるのは、生活に困窮し住まいを失った高齢者らにとって、安全面で問題のある住宅・施設などが事実上の「受け皿」にされていることです。今回火災があった札幌の施設も無届けの有料老人ホームの可能性が指摘されています。法的位置づけがあいまいな、生活困窮者の「受け皿」的な住宅・施設は全国約1200カ所とされています。行政の支援のない民間施設の多くは老朽化している上、資金不足で防火対策などに十分手が回らないのが現状です。ひとたび火災になれば体の自由がきかない高齢者などは逃げ遅れ、被害を一層拡大する危険があります。「民間施設頼み」に限界があることはいよいよ明白です。

 政府は、低所得者、高齢者、障害者など「住宅確保要配慮者」向けに全国820万戸の空き家の一部を使って「居住の安定」をめざす「住宅セーフティネット政策」を打ち出していますが、予算が少なく対象者も限定するなど使い勝手も悪く、大きな前進はみられません。制度の改善とともに、「住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸」(公営住宅法第1条)する公営住宅の増設、家賃補助制度創設など抜本的対策を図るべきです。低所得の高齢者向けの養護老人ホームの増設・拡充へ公的な財政支援の拡充こそ必要です。

生活保障への改革こそ

 貧困の広がりの中で、安倍晋三政権が生活保護費の生活扶助の削減を実行しようとしていることは大問題です。安倍政権は生活扶助だけでなく住宅扶助も引き下げており、生活困窮者の暮らしを追い詰めています。安全な住まいで人間らしい生活が送れるためにも生活保護費は削減でなく拡充こそ求められます。憲法25条に基づく国民の生存権が保障される制度へ、「生活保障法」にするなどの生活保護法改正は待ったなしです。


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