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2018年1月26日(金)

主張

草津白根山の噴火

観測・警戒体制の点検と検証を

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 群馬県西部の草津白根山の本白根山が噴火し、12人が死傷しました。火山噴火で犠牲者が出たのは4年前の御嶽山(長野・岐阜県境)の噴火以来です。草津白根山は、気象庁が常時監視する火山の一つですが、今回は重視して警戒していた火口とは異なる場所で、兆候をつかめず突然噴火しました。いつ噴火するかを予知するのは困難な現状を改めて示すもので、日本の火山の観測・警戒体制全体にとって、重い課題を突き付けています。悲劇を繰り返さないため、従来の経験や発想にとらわれず、火山防災の仕組みの整備・強化へ向け総点検と検証が求められます。

「警戒網」の外で突然に

 今回の噴火は、普段は穏やかな山でも、突然発生する可能性がつねにあり、ひとたび噴火すれば甚大な被害を引き起こす火山の恐ろしさを浮き彫りにしています。気象庁は噴火警戒レベルを「入山規制」に引き上げました。大規模な噴火につながれば雪が解け、泥流が発生する危険性も指摘されています。観測・監視を強め、被害を拡大させない対策が急がれます。

 草津白根山は、白根山、逢ノ峰、本白根山など火山活動で生まれた山々の総称です。全国111ある活火山のうち、気象庁は50カ所を24時間体制で観測しており、草津白根山はその一つです。

 今回噴火したのは、南部の本白根山側でした。北部の白根山側は1980年代に水蒸気噴火があるなど活動が活発だったため、同山周辺に監視カメラや地震計などを配置し警戒を続けてきましたが、本白根山側は約3000年間噴火していないと長年考えられてきたため観測網は手薄で事実上「ノーマーク」でした。しかも今回の噴火は前兆をとらえにくい水蒸気噴火の可能性が強いとされています。今回の教訓を踏まえ、従来の観測・監視の方法を洗い直し、必要な見直しを思い切って行うことが求められます。

 もともと噴火など火山活動の予知は、観測体制をとっていても難しいとされています。それぞれの火山ごとに特性や歴史が異なっていることに加え、活動周期が長期にわたるため、どのような兆候がどう進展するのか記録に残されていることはなかなかありません。

 本白根山も最近の地質調査で直近の噴火は約1500年前にあったことが指摘されるようになったばかりでした。火山ごとにそこに熟知した専門家を配置することをはじめ十分な人材と体制を整えることは、どうしても欠かせません。

 しかし火山研究者の確保・育成は立ち遅れ、活火山111に対し研究者は40人程度にすぎないといわれています。火山は長期間の地道な研究が必要なのに、短期間で結果が求められる「成果主義」優先の研究環境が背景です。研究者の育成、気象庁の火山専門職員の養成・増員はいよいよ急務です。

火山国の政治が問われる

 御嶽山噴火を機に導入された入山者への速報が出されなかったこと、観光客の避難計画を未整備の自治体が依然あることなど改善すべき課題は山積しています。

 日本は、世界の活火山約1500のうち約7%が集中する有数の「火山国」です。火山への備えは、地震対策などと並ぶ政治の大きな責任です。国民の命と安全を守るため、必要な予算確保など力と知恵を惜しんではなりません。


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