2017年12月25日(月)
危険!安倍流「大学改革」 1
授業料免除
産業界のニーズで選別
財界を震源とした大学改革が急テンポで進んでいます。安倍政権が8日に決定した「新しい経済政策パッケージ」は、高等教育無償化と引き換えに、財界の要望と国策に沿った改革を大学に迫っています。改革は大学を軍需産業の下請けにする軍学共同の策動とも密接に結びついています。
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国際人権規約は、大学までの段階的な高等教育無償化を各国に求めています。日本は1979年に批准したものの無償化規定は留保。世論と運動に押され2012年に留保を撤回しました。
安倍政権が今回打ち出した無償化は、同政権の掲げる「人づくり革命・生産性革命」の一環として、低所得者ほど重い負担増となる消費税率10%への引き上げを前提に、給付型奨学金の拡充や住民税非課税世帯の子どもの大学や専門学校などの授業料を免除するものです。
その実態は、国民が願い、国際人権規約や憲法が求める教育の機会均等の実現とは程遠い中身です。
要件設定
対象が狭く限定されているうえ、授業料の免除はどの学校に進んでも受けられるというわけでもありません。本人の学習意欲や成績要件に加え、対象となる学校にも「産業界のニーズ」を踏まえるための大学改革が要件として課されているからです。
授業料免除を、産業界に奉仕する大学づくりのてこに使おうとしているのです。
授業料免除の対象校となるための要件には、理事の2割以上を産業界などから任命することや、実務経験のある教員を必須単位の1割以上に配置することなどが盛り込まれています。
子どもたちにとっては、進学した大学が要件を満たしていなければ授業料免除を受けられないことになります。
全日本教職員組合の波岡知朗中央執行委員は、産業界にとって都合のいい大学に進む子どもだけを支援することにならないかと危惧します。「政権が望む方向に子どもたちを誘導するために授業料免除を利用するもので、本当に無償化といえるのか。教育の機会均等の保障という立場とはかけ離れた政策だ」
軍学共同
憲法9条改悪、「戦争する国づくり」を突き進む安倍政権は、大学を軍需産業の下請け研究機関にする「軍学共同」の動きも強めています。
大学には国策の名で戦争に動員された苦い記憶があります。日本学術会議は3月、再び学術と軍事が接近してきているとの認識のもとで新たな声明を発表。軍事目的の研究はしないとした過去の声明を継承しました。
声明策定に携わった神奈川大学の小森田秋夫教授は「国が出す金だからという論理を拡大していくと、政府の介入に歯止めがなくなる。危険な議論だ」と政府の動きを懸念します。(つづく)