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2017年12月9日(土)

小池都知事大混迷 豊洲移転

“ゼネコン言い値”随意契約を検討

追加工事 入札不調相次ぐ

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 小池百合子東京都知事が、築地市場(中央区)の豊洲新市場(江東区、東京ガス工場跡地)への移転を強行しようとする姿勢に、都政が大混迷しています。市場業者や都民の反対に加えて、追加対策工事9件の競争入札のうち7件が不調に。都は苦肉の策として競争入札をやめて特命随意契約に切り替えることを検討し、都庁内からも批判があがっています。(岡部裕三)

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(写真)質問する米倉春奈都議=6日、東京都庁

米倉都議追及

 豊洲新市場問題が焦点となった12月6日の都議会本会議代表質問。

 「特命随意契約では、ゼネコンに全面屈服しゼネコンが言うとおりの高値で契約することになるのは明らか。知事が強調している透明性や競争性の確保、賢い支出と逆行するのではないか」と追及する日本共産党の米倉春奈都議に対し、小池知事は「ステップを一つずつ踏みながら、クリアに行っている」とはぐらかし、まともに答えられませんでした。

 米倉氏は、築地女将(おかみ)さん会がよびかけた、市場移転の是非について全組合員投票を東京魚市場卸協同組合(東卸、537業者)に求める請願に、過半数の仲卸業者が署名したことや移転反対の声を紹介し、「市場業者の納得と合意なしに移転を強引に進めることは許されない」「食の安全・安心の公約を投げ捨て、築地市場をこわすような石原氏以来3代の知事と同じ愚を繰り返すのか」と移転計画の撤回を迫りました。

 一方、公明党は特命随意契約への変更検討を「遅きに失した感が否めない」と主張。自民党は小池知事の入札制度改革を「間違った制度変更だった」と批判。都民ファーストの会も築地市場の豊洲移転を求めました。

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(写真)地下水がたまった豊洲新市場の水産卸売場棟(7街区)の地下空間=2016年9月24日、東京都江東区

「主導権握られる」

 豊洲追加工事の入札は、小池知事が導入した入札制度改革に基づいて原則として1者入札を禁止し、予定価格も事後公表とし工事費の高止まりを防ぐ方針のもと実施したものでした。

 都は10月30日から11月27日にかけて豊洲の追加工事9件の競争入札を行いましたが、契約できたのは2件だけで、7件が不調に終わりました。

 このうち地下水管理システム工事の2件の入札では、鹿島と大成の応札額が予定価格(各4億円台)の1・7倍から約2倍と大幅に超過し、不調になりました。

 不調をうけて都は、小池知事の指示をもとに予定価格の見直しを行い、11日に行う再入札では3件の地下水管理工事の予定価格を計5億円(4割)も上乗せしました。2回目も不調となった場合は、競争入札をやめて特命随意契約に切り替え、大手ゼネコンに見積もりを出してもらい“密室交渉”をする意向です。

 豊洲追加工事の受注をねらう大成、鹿島、清水の3社は17年3月期決算(連結)では、売上額が計4兆8000億円を超え、計4200億円余もの営業利益を上げる大企業。これを背景に、豊洲の入札も高姿勢で臨んでいるとの指摘もあります。

 特命随契にしたらどうなるのか―。公共工事発注に携わった元都財務局幹部は記者に語りました。

 「特命随意契約に切り替えれば、ゼネコンに足元を見られて主導権は完全に相手側に握られ、相手の言い値で契約せざるをえなくなる。しかも、大手には都のOBがたくさん天下りしているから、なおさらだ」

 豊洲新市場の工事を受注し、追加対策工事まで受注をねらう大成、鹿島、清水の3社には、局長級を含む都幹部OBが計23人も天下りしていることが、本紙報道(16年10月4日付)で判明しています。

「食の安全」も放棄

 昨年夏の都知事選で当選した小池知事は就任直後の8月、11月に予定されていた豊洲新市場の開場計画を延期しました。延期理由は、「食の安全」への懸念や新市場の整備費が高騰したことを疑問視したためでした。

 しかし、今年に入って地下水調査で環境基準の100〜120倍のベンゼンを検出し、汚染対策の失敗が明らかになったにもかかわらず、小池知事は6月に、築地市場を豊洲に移転する方針を発表。7月には土壌と地下水の有害物質を環境基準以下にする「無害化」の約束も撤回し、効果が疑問視されている追加対策工事を急ぎ、来年10月中旬に開場する方針に固執しています。

豊洲追加工事入札の結果

◇地下水管理システム工事

 5街区 不調(鹿島)

 6街区 不調(大手不参加)

 7街区 不調(大成)

◇地下空間の床面工事

 5街区 鹿島が受注

     (落札率99.0%)

 6街区 不調(清水)

 7街区 不調(大成)

◇地下空間の換気設備工事

 5街区 不調

 6街区 不調

 7街区 アサノが受注

     (落札率94.6%)

( )内は、入札に参加した大手ゼネコン

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予定価格引き上げ 疑問

 全国市民オンブズマン連絡会議幹事(談合問題担当)の大川隆司弁護士の話 都が豊洲追加対策で入札不調となった地下水管理工事の2回目の入札で、予定価格を1回目と比べて4割も引き上げたことは、大きな疑問だ。新聞報道では、1年前と比べて鋼材の市況価格は1割強、建築技術者の派遣料は5%程度の値上がり率なのに、豊洲工事では短期間に予定価格を4割も引き上げている。しかも、入札不調となった場合はゼネコンと交渉して随意契約を行うことを検討するというのでは、ゼネコン側が再入札で予定価格を下回る額を入れることはありえないと思う。

 地下水と地下空間底の追加工事入札の結果を見れば、談合の疑いがある。“随意契約は遅きに失した”などという都議会与党の質問は、とんでもないと思う。豊洲移転計画に批判が強いのだから、都民のお金を預かっている都は移転中止を含めて賢い選択をしてほしい。都は随意契約をせずに、入札制度改革を積極的にすすめることを優先すべきではないか。


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