2017年11月26日(日)
笹子トンネル事故
発生まで13年 防災訓練せず
消防要請応じず問われる安全体質
中日本高速
閉鎖された空間であるトンネル内での火災は、大惨事につながる危険があります。それに備えた毎年の防災訓練を、中央自動車道の笹子トンネルでは1999年から12年の天井板崩落事故までの13年間実施していなかったことが25日、本紙の調べでわかりました。同トンネルを管理する中日本高速道路の安全体質が問われます。(矢野昌弘)
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笹子トンネルは全長4700メートルを超える中央自動車道でも有数の長いトンネルです。少なくとも1999年から事故までに、同トンネル内で5件の火災(上り線で4件)が発生しています。
天井板崩落事故で、救助に当たった東山梨消防本部(山梨県甲州市)によると、消防や警察、日本道路公団(当時)が参加する総合訓練は98年まで毎年行っていました。年ごとに上りトンネルと下りで交互に訓練したといいます。
訓練は、通行止めにしたトンネル内に大破した車を持ち込み、救助や消火、搬送などの一連の作業を確認するもの。
ところが「99年以降、道路の通行禁止および制限をすることができないことを理由に訓練が実施されていない」といいます。
事故の後も、笹子トンネルでは、天井板を撤去した直後に防災訓練を上下線でそれぞれ1回だけ行ったのみです。
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同消防本部は「(訓練をやめた)99年以降も機会あるごとに訓練を呼びかけてきた」といいます。
中日本は本紙の取材に「通行止めをした場合の社会的影響を鑑みて、トンネル内での防災訓練は全国的な方針で、工事などで通行止めをした場合にあわせて実施してきた。笹子トンネルは99年以降、工事などでの通行止めはしていないので、防災訓練は行っていない」と答えました。
事故をめぐっては、中日本からの情報提供の少なさが、救助活動の遅れにつながったと指摘されています。
中日本は、発生直後「トンネル上部が崩れて、車が埋まって炎上している」とのみ、消防に通報しました。その後も中日本から消防への情報提供が少なく、事故は当初、トンネル自体の崩落によるものとみられていました。天井板の落下を確認するまでに2時間半かかりました。
訓練を長年行わなかったことと、中日本の事故対応の遅れとの因果関係が注目されます。