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2017年11月25日(土)

在宅介護の生活援助

重度化招く利用回数制限

実態把握せず、多数回利用を敵視

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 2018年度の介護報酬改定に向けた議論で厚生労働省は、社会保障審議会の介護給付費分科会に、「生活援助」のサービス抑制の方針を示しました。介護の困難をさらに厳しくし、重度化を招きかねない提案です。

 (北野ひろみ)


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 厚労省は給付費分科会で、介護職員らが在宅を訪問して行う介助サービス(訪問介護)のうち、掃除や調理など直接身体に触れない「生活援助」について、1日に複数回報酬の算定ができる現行の報酬体系は「必要以上のサービス提供を招きやすい」として多数回利用を問題視。

 ケアプラン(介護計画)を作成するケアマネジャーに対して、“生活援助中心型”の訪問介護で一定回数を超えるケアプランは保険者である自治体に届け出をさせ、市町村は地域ケア会議などでサービス内容の検証を行い、ケアプランが不適切な場合は是正を促す仕組みを提案しました。

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(写真)在宅介護の厳しい実態を訴える相談が相次いだ介護・認知症なんでも無料電話相談=11日、東京都豊島区

制限の基準定める

 厚労省は、平均利用回数から外れるものを「通常の利用状況と著しく異なる」(偏差)として、要介護度別に基準となる回数を算出(表)。要介護1で月26回、要介護3で月42回など基準回数を超えるものを届け出の対象とするとしました。

 しかし、厚労省自身が合計90回以上の多数回利用がある自治体に、サービスの必要性について調査したところ、48件中46件が「適切なサービス利用」だと回答。多数回利用の例として示されたものには、▽独居で認知症のため服薬の管理が必要▽せん妄等のため他のサービス利用は難しい▽配偶者も介護状態で支援が受けられない―など、機械的な回数制限で介護給付を取り上げれば、在宅での生活が立ち行かなくなり、重度化を招きかねない現状を示すものが目立ちました。

「軽度者」切り捨て

 “生活援助中心型”の訪問介護はこれまで、財務省や財政制度等審議会でもたびたび削減対象として取り上げられてきました。

 厚労省が報酬改定の審議で示してきたのは、生活援助に特化した担い手を養成するための要件を緩和した研修の新設や、訪問回数の機械的制限など、徹底した「軽度者」切り捨ての方針です。

 前回の報酬改定で要支援1、2を介護給付から外したのにつづき、要介護1、2の「軽度者」への介護給付を切り捨て、社会保障を大幅削減したい狙いがあります。

 6月の財政審では、自治体への聞き取りはせず実態を把握しないまま「月100回を超えて利用されているケースも認められた」などと多数回利用を敵視。厚労省はその資料をそのまま給付費分科会の資料として提出し、委員からも「月31回といっても、1日1回だ」「本当に妥当性を欠くものなのかという検証がされていない。回数のことだけで多い少ないと言うのは理解に苦しむ」などの批判がでました。

 財務省は、根拠が薄弱な資料の問題を指摘した本紙取材に対し、「1日1回以上の利用を問題視している」と明言。10月の財政審では要介護1、2の利用回数の分布図を示し、「軽度者」の給付を切り捨てたい狙いをあらわにしました。

「離職ゼロ」と矛盾 制度骨抜きに

介護給付費分科会を傍聴してきた、福祉情報を発信するオフィス・ハスカップの小竹雅子さんの話

 介護保険制度が換骨奪胎されたような改定案です。

 1日に複数回の生活援助サービスが必要な人は、回数が制限されると、暮らしに支障が出ます。経済力がない人は家族がみるしかなく、政府が掲げる「介護離職ゼロ」と矛盾します。

 市町村が地域ケア会議で複数回利用の検証を行うとしていますが、1700を超える自治体の作業負担を考えれば、どこまで対応できるか。最初から基準を超えないケアプランに誘導され、利用抑制につながる可能性大です。

 財務省は月31回以上のサービスが2万4千件以上あると問題視していますが、厚労省の自治体調査で不適切と判断されたものは48件中2件でした。回数にこだわり、わずかな不適切事例をあげつらうのは、利用者、介護者の不安を拡大し、ケアマネジャーやホームヘルパーの働く意欲を低下させるだけです。

改悪に反対抜本改善を

日本共産党の提案

 日本共産党は、安倍政権の連続的な介護保険改悪に反対し、介護・福祉・医療制度を立て直す手だてを具体的に提案しています。

 そのなかで、サービス取り上げを中止させ、利用料・保険料の減免制度を確立すること▽介護労働者の労働条件を改善するため、介護報酬とは別枠の、国費の直接投入による賃金引き上げの仕組みをつくること▽介護報酬も、抜本的な増額・底上げを図ること―を求めています。


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