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2017年9月18日(月)

豊洲移転 強行すれば市場会計破綻

築地再整備のアイデア募集を

公認会計士 井上徹二さんに聞く

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 東京都が築地市場(中央区)を豊洲新市場(江東区、東京ガス工場跡地)に移転しようとしている問題について、“移転を強行すれば、都の市場会計は破綻する”と警告している公認会計士の井上徹二氏に聞きました。(岡部裕三)


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(写真) いのうえ・てつじ 1940年生まれ。阪南大学教授、埼玉学園大学経営学部長、川口短期大学副学長を歴任。「臨海3セク都民オンブズマン」メンバーとして、臨海三セクの破綻処理を都に提言。著書に『税務会計論の展開』など。

 ――小池百合子知事が6月に出した豊洲新市場への移転方針についてどうお考えですか。

 築地市場と場外市場は、外国からも多くの観光客が訪れる観光名所です。全国から集まる新鮮な魚介類や青果を、長年の市場関係者の努力で安全に消費者に届けてきました。すしや刺し身など魚料理は、新鮮さと安全性が保証されるから生食が可能なのです。日本の和食文化がユネスコ無形文化遺産に登録されましたが、築地市場も世界遺産、日本遺産、東京遺産として残す価値があると思います。

 知事は「築地は守る」といいますが、築地市場を解体し、民間企業に再開発させて、どうして築地市場業者を守れるのでしょうか。

 豊洲移転計画には二つの欠陥があると思います。

 一つは、豊洲市場予定地は有害物質で汚染されたままで、「食の安全性」が保証されていない問題です。

 豊洲に移転したら新鮮な魚を安心して食べられないのではないかという不安を、多くの都民は抱いています。汚染を残したまま移転を強行したら、買い出し人や消費者が豊洲市場離れすることになるでしょう。

 二つ目の問題は、過大な市場建設投資を行い、管理経費と減価償却負担で市場の赤字経営が避けられず、経営的に必ず行き詰まるということです。

 豊洲新市場の整備費は5884億円といわれています。豊洲に巨大な建物、冷暖房設備などを造ったために、その維持管理費用が築地の年間44億円から160億円へと4倍近くに膨れ上がり、毎年92億円の赤字が発生すると試算されています。そのうえ、8月臨時都議会で追加対策として55億円の補正予算を可決しましたが、今後も追加投資に迫られ、赤字が膨らむことは避けられないでしょう。

 都の市場問題プロジェクトチーム(市場PT)の報告書は、豊洲に移転すれば市場会計は破綻し、都民の税金投入が不可避だと警告しています。

 私は税理士・公認会計士として、多くの企業の経営をみてきました。企業が行き詰まり、倒産する理由の多くは巨額の設備投資が原因です。豊洲移転は同じ誤りをすることになります。

白紙に戻して

 都は、築地市場用地を売却せずに、「民間活力」で再開発し年間160億円の賃料収入をあげるとしていますが、その根拠は不明で実現性は薄いと思います。

 都はこれまでも臨海副都心開発で「民活」を導入し、巨大なビルをつくった第三セクター5社が大きな損失を出し、民事再生に追い込まれました。都有地を信託銀行に貸し付けて信託報酬を受ける土地信託事業も失敗しました。結局、ビル工事を請け負ったゼネコンや資金融資をした銀行の利息稼ぎに利用されたのです。

 民間企業に築地の再開発を丸投げすることは避けるべきです。

 ――築地市場は移転せずに、営業しながら順次改修するプランが建築家から提案されています。

 市場PT報告書は、築地市場で営業をしながら改修することは、「技術的に何ら問題はない」と断言し、改修費用は778億円から1388億円と試算しています。

 毎年巨額の赤字が累積する豊洲移転をやめれば、築地市場の再整備は財政的にも十分可能だと思います。移転計画は白紙に戻して、築地を居ながら再整備するためのアイデアや提案を市場業者や建築家などから募集してはどうでしょうか。


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