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2017年8月24日(木)

築地には建築史的価値がある

使い続ける決断を

建築家 兼松紘一郎さんに聞く

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 東京都の小池百合子知事は、築地市場(中央区)を豊洲新市場(江東区の東京ガス工場跡地)に移転する一方、築地市場は解体して跡地を再開発する方針を打ち出しました。築地市場には「高い建築史的価値が認められる」として、都に保存活用を要請している国際組織「ドコモモ」の日本支部「ドコモモ・ジャパン」の元幹事長で、建築家の兼松紘一郎さんに思いを聞きました。(東京都・川井亮)


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 小池知事が築地市場を解体して、跡地を2020年東京五輪の輸送拠点に暫定利用するという方針を表明した時、「築地市場を守ると発言していたのに、どうしてそうなってしまうのか」と思いました。

 建物には、それを使う人たちが生活してきた歴史や思いが詰まっています。ドコモモは価値ある建築物と環境形成の記録を調査し、保存を求めている国際組織で、1988年に設立されました。

市場で唯一選定

 「先達が建ててきたものを、古くなったからといって簡単に壊してしまってよいのか。そういう思いがないと、本当によい物が造れないのではないか」という問題意識を持って、日本でも著名な建築家や研究者が集まりました。

 ドコモモ・ジャパンでは価値ある建物として、幅広いジャンルの建物から当初20件、2003年に100件を選定し(現在は208件)、展覧会や研究集会などを開いてきました。築地市場は市場としては唯一、選定された建物です。

 築地市場は1934年に東京市(当時)の市場として建築(翌年開場)されました。扇形をした独特の形状は、当時、長編成の貨物列車で運び込まれる荷物を、積み下ろししやすくするために造られました。鉄骨造りの高い屋根は、日光を取り入れるのに適しています。

 築地市場では、魚を積んだターレット(小型搬送車)を自由に動かして、魚介類を移動しやすい空間構成になっています。

 80年以上前に、これだけの巨大市場を造った建築家集団の力は傑出しており、学ぶべきものが無数にある。それを壊してしまうのは、建築家の思いも、築地市場で働く人たちの思いも、買い出しに行く人たちの思いも踏みにじるような行為です。

話が違うのでは

 豊洲新市場は3〜5階建ての建物が三つの街区に分かれて、それぞれがスロープやエレベーターで荷を移動する仕組みですが、築地市場のような機能を保つことができるのか疑問です。市場で働く人たちからは「豊洲では長い距離を移動しなければならず不便だ」という声を聞きます。施設を建設する時に、築地で働く人の思いをどこまでくみ取ったのでしょうか。

 小池さんは知事になる前は「市場は築地でいい」と語り、知事選では「移転はいったん立ち止まる」と公約し、知事になってからも「築地ブランドを守る」と発言していました。それなのに、築地市場を壊してしまうのでは、結局、もともとの移転計画と変わりがありません。それは話が違うのではないか。政治家の発言や公約とは一体何だったのかということにもなります。

 築地市場の80年の歴史を踏まえて、耐震など安全対策を行いながら、市場を続けていくことは可能だし、そうすれば知事に対する都民の評価も高まると思います。価値のある築地市場を使い続ける決断をしていただきたいと思います。


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