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2017年6月30日(金)

きょうの潮流

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 漫画家のつげ義春氏(80)が2017年度第46回日本漫画家協会賞大賞を受賞しました。17歳でデビューして以来、賞とは無縁だったといいます▼贈賞式(16日)では、同協会理事長で選考委員長のちばてつや氏が「戦後まもなくの日本人の貧しい生活を詩的に表現した」と作品世界の芸術性をたたえ、選考委員の弘兼憲史氏は「漫画研究会に所属していた大学時代、こんな漫画を描いていいんだと衝撃を受けた」と語りました▼仕事もままならない切ない日々の暮らし、高度経済成長から取り残された辺境の地への旅、不安と寂しさに彩られた夜ごとの夢。それらを題材にしたつげ作品から伝わってくるのは、踏みにじられた者たちへの優しいまなざしと、それでも生き抜こうとする人間の営為への信頼です▼5歳の時に父が病死し、母が行商や仕立物をして兄弟3人を育てました。母の再婚後は義父の仕打ちに傷つきながらも小学校を卒業し、メッキ工場で働き始めます。当時の体験を基にした「大場電気鍍金(メッキ)工業所」には、職人が鉱毒に内臓を侵されて死んでいく劣悪な労働環境の中でも、生きがいを求めて働く少年工員が描かれています▼かつて多摩川沿いにあった在日朝鮮人の集落への愛着を表現した「近所の景色」からは、差別を生む社会構造に対する静かな怒りと悲しみが感じられます▼「自分の創作の基調はリアリズムだと思っている」というつげ氏。現実をあるがままに直視することは、人間の原点に立ち返ることなのでしょう。


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