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2017年6月15日(木)

きょうの潮流

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 冒頭から続く場面。なだらかな草原の丘を画家の教授と学生たちが笑いながら転がっていく。和気あいあいとした雰囲気の野外講義。「人は認識したものしか見ていない」▼一転して教授の自宅。独り向かう白いキャンバスが突然、真っ赤に染まる。独裁者スターリンの肖像画が描かれた巨大な垂れ幕が窓を覆い光を奪う。自由と抑圧を暗示させる映画の導入部。アンジェイ・ワイダ監督の真骨頂でしょう▼いま岩波ホールで公開中の「残像」は昨年90歳で亡くなったワイダ監督の遺作です。第2次大戦後、ソ連の強い影響下に置かれたポーランド。そこでは社会主義の名を借りたスターリン式の専制政治、思想統制の嵐が吹き荒れていました▼弾圧の中で信念を貫いた実在の芸術家を主人公に、自由とは、人間の尊厳とは何かを問いかけます。教授を追われ職にもつけず、食料配給も受けられない。芸術を枠にはめ、表現の自由を抑え込もうとする国家体制に苦悩しながら抗する姿はワイダ自身と重なります▼ジャーナリストの綿井健陽(たけはる)さんは、内心の自由を縛る共謀罪が時の政権によってごり押しされようとしている日本でも同じ空気が現れてくると。「自己検閲意識と萎縮をもたらす法律が覆う社会や国家は、自分の内面と身体に巧妙に入り込んでくる」▼死の直前にワイダが込めたメッセージ。人間は自由を得るためにどれほどの代償を払い、たたかってきたのか。私たちはすでに知っている。そのことを忘れてはならない。歴史の残像を―。


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