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2017年5月30日(火)

主張

「観光立国」政策

開発優先では魅力発揮できぬ

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 安倍晋三政権は訪日外国人観光客の拡大をめざす「観光立国」を経済政策「アベノミクス」の柱の一つにしています。2016年に約2400万人だった外国人観光客を20年に4000万人に増加させ、その旅行者の国内消費額を8兆円(16年は約3・7兆円)にする目標などを盛り込んだ「観光立国推進基本計画」を3月に閣議決定し、具体化のための「民泊」新法案などが国会で審議されています。計画では「世界が訪れたくなる日本」と銘打ちますが、その内容は、各地の自然や風景、伝統、文化の魅力を本当に発信できるものになっているでしょうか。

「民活」の最大限活用で

 「国際競争力を高め、観光産業を我が国の基幹産業に」―基本計画が前面に出した姿勢です。安倍首相が議長としてまとめた「明日の日本を支える観光ビジョン」(昨年3月)を踏まえたものです。「観光ビジョン」では、「規制緩和などを駆使し、民間の活力を最大限活用した安定的・継続的な観光まちづくり」をさかんに強調しています。

 基本計画で目立つのは、大型開発などの交通インフラの建設・整備の促進です。高速鉄道ネットワークを拡充するとして、リニア中央新幹線や整備新幹線が位置付けられました。羽田空港の国際線の発着枠の拡大、成田空港の第3滑走路の整備、クルーズ船のための港湾岸壁の整備も挙げました。貴重な自然環境や景観を壊す大型開発推進は、日本の魅力を失わせることにしかなりません。国立公園内に「上質な宿泊・滞在施設の誘致」と記したことも問題です。

 民間の住宅やマンションの居室を有料で提供する「民泊サービスの対応」は「必要な法整備に取り組む」とし、国会に「民泊」新法案(住宅宿泊事業法案)が提出され、審議が始まりました。居住専用地域での営業、家主不在でも管理者がいれば認められるとされていることに、周辺住民とのトラブルが起きることが懸念されます。

 昨年末の国会で強行したカジノ法による統合リゾート(IR)も「法制上の措置について検討をすすめる」とうたいます。ギャンブル依存症を深刻化させるカジノ推進は、とても観光の目玉にならず、地域を衰退させるだけです。

 「観光立国」にかこつけ、リニアへの3兆円にのぼる財投資金の投入などの大型開発、安全置き去りの「民泊」新法、カジノ解禁などの悪政を国民に押し付けようというやり方は許されません。

 観光客数や消費拡大という「量」ばかり優先して、追い求める政策は極めて危険です。1980年代に大企業のもうけのために大規模なリゾート開発が各地で乱立し、それがバブル経済崩壊で行き詰まり、地域経済に打撃を与えた痛苦の経験などを想起すべきです。

四季や文化の特色生かし

 南北に長い日本列島は四季の変化に富み、各地の景観や文化にそれぞれ特色があります。この利点をどう守り、さらに生かすかに知恵と力を注ぐことが必要です。国は財源確保などに責任を果たすべきです。文化財保護に欠かせない学芸員を中傷した山本幸三地方創生相を留任させている安倍首相の姿勢はここでも問われます。観光客にも住民にも魅力となり、地域経済を真に活性化させる観光政策こそが求められます。


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