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2017年4月25日(火)

主張

「受診手遅れ死亡」

いのち奪う危機放置できない

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 体調に異変を感じても金銭的理由から我慢を重ね、どうしようもなくて受診したときは手遅れで命を落としてしまう―。こんなケースが後を絶ちません。全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)が先月末に公表した調査では、昨年「経済的事由による手遅れ死亡事例」は28都道府県で58人にのぼることが分かりました。保険料を払えずに保険証が手元になかったり、保険証はあっても窓口での支払いが困難だったり…。お金の有無が命の危機に直結していることは、あまりに深刻です。痛ましい事態を引き起こさないために政治は役割を果たすべきです。

体調に不安抱えつつも

 ある1人暮らしの60代男性は退職後、国民健康保険に加入したものの、年金とパート代では生計維持が精いっぱいで、国保料が払えず正規の保険証を取り上げられ、窓口で10割負担する資格証明書しかありませんでした。せきが出始め不調を自覚しても、支払いが怖く不安を感じながら半年過ぎ、手足にまひが出るほど悪化、受診すると肺がんがすすみ脳への転移も見られ、6カ月入退院を繰り返した後、亡くなってしまいました。

 これは民医連調査で判明した58事例の一つです。その半数以上の32例が保険証のない人、資格証の人、有効期間の短い短期証の人でした。職を失った人、収入が不安定な非正規雇用の人、低い年金額の高齢者がほとんどで、収入の有無が命と健康を脅かしている実態を浮き彫りにしています。

 受診手遅れ死亡について、民医連は加盟する医療機関を通じ2005年から調査していますが、近年は60件前後と、減る傾向は見えません。この調査で表れる数字は、「氷山の一角」であり、現実にはかなり多くの人たちが、経済的理由で受診が手遅れになり命を失っていることをうかがわせます。

 収入が少なく国保料(税)が払いきれず滞納したのは、厚生労働省の昨年6月時点のまとめで約312万世帯にのぼります。東京都では国保加入世帯の2割以上です。年間所得250万円の4人世帯にたいして年間40万〜50万円以上の保険料などというのは負担の限界を超えています。資格証と短期証の交付が全国で約118万5千世帯にも達することは、必要とするとき安心の医療を受けられる「国民皆保険」の根幹を揺るがす大問題です。国保財政の強化へ国と自治体は役割を果たし、高すぎる保険料を引き下げることなどが緊急に必要です。

 安倍晋三政権が18年度の開始を予定する「国保の都道府県単位化」は、これまで市町村が独自に決めていた保険料を「統一」させる動きを加速させるものです。高い保険料が住民に一律に押し付けられる危険も強まっており、保険料アップを許さない世論と運動を広げることが急務となっています。

窓口負担の軽減が重要

 保険証があっても、本人負担が原則3割という医療機関の窓口負担によって、受診をためらい手遅れになる人も少なくありません。原則無料が主流の欧州諸国と比べて、日本の負担は高すぎます。窓口負担引き下げは切実な課題です。

 お金がなくて医療をあきらめる人をうむ事態の打開は待ったなしです。国民の生存権保障と、国に社会保障増進の責務を求めた憲法25条にもとづく政治を実現することが求められます。


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