2017年3月31日(金)
きょうの潮流
「過去を覚えるものは未来のために働くものである。広島を覚えるものは平和のために働くものである」。ローマ法王、故ヨハネ・パウロ2世が広島に残した言葉を、85歳のサーロー節子さんは胸に刻んでいます▼中学生の時に広島で被爆したサーローさんが米国に留学したのは第五福竜丸事件が起きた年。目的地に着くと記者に囲まれ、日本の漁船が被害を受けた米国の水爆実験について感想を求められました▼核実験への怒りを口にすると脅しの手紙が届くように。そのとき原爆で死んでいった家族や学友の姿が思い浮かび、被爆体験を語っていくことが自分の使命であり、責任であることを強く自覚したといいます▼核容認が根強い北米で反核運動にとりくんできたサーローさん。いま国連で開かれている核兵器禁止条約の実現に向けた会議で、語り続けるのは苦しいことだったが、やっと世界の理解がここまで到達したと。同時に不参加の日本政府には激しい怒りを。「母国に裏切られ、見捨てられた」▼残虐を極めた悪魔の兵器。想像を絶する苦しみを味わった唯一の被爆国が核廃絶に背を向ける。被爆者や国民にたいするこれほどの背信はあるのか。被爆者で被団協事務局次長の藤森俊希さんも「同じ地獄をどの国のだれにも絶対再現してはならない」と、法的な拘束力をもつ条約の成立を呼びかけました▼誰も座っていない日本代表の席に置かれた白い折り鶴。翼の部分に、こんな書き込みがあります。「あなたがここにいてくれたら」