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2017年1月12日(木)

主張

軽井沢バス事故1年

悲劇繰り返さぬ抜本策強めよ

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 乗客乗員15人が死亡、26人が重軽傷を負った長野県軽井沢町のスキーバス事故から15日で1年です。前日夜に都内を出発し、長野県内のスキー場に向かっていたバスが道路脇のガードレールを突き破って転落し、大破―。死亡した乗客13人は全員大学生でした。尊い命が失われた現場近くに設けられた献花台には犠牲者を悼む人が絶えないといいます。悲劇を繰り返さないため、安全最優先の抜本対策の強化が急務となっています。

“極限の過当競争”の中で

 この事故で大問題になったのは、需要と供給を法律でコントロールする「需給調整」の「規制緩和」がバス業界で進められてきたことです。事業許可のチェックを事前から事後にしたことなどがダンピング競争を生み、法令違反をしないと競争に勝てない、受注できないような事態まで招き、「悪質業者」をまん延させました。

 貸し切りバス事業を免許制から許可制にした2000年の法改定により、それまで2000社程度だった事業者は15年度には2倍以上の4500社以上に急増しました。一方の輸送人員は1・2倍ほどしか増えず、限られた需要を多くの事業者が奪い合う“極限の過当競争”となり、届け出た運賃の下限をさらに下回る運賃で仕事を請け負うツアーが後を絶たない状況を引き起こしました。

 労働分野の規制緩和推進も大きな要因となりました。軽井沢事故の運転手は非正規の不安定雇用で、大型バスの運転経験も乏しいままでした。事業者に義務付けられた運転手の安全管理がなおざりにされていたことは重大です。

 浮かび上がるのは、同業界の過酷な長時間労働です。国土交通省のバス運転手勤務実態調査(14年)では、1日の平均的な拘束時間(ワンマン業務の場合)は12〜13時間が最多の20・6%と深刻な状況でした。厚生労働省の自動車運転者の労働時間の基準は「過労死ライン」とされる月80時間を大幅に上回る残業まで可能としています。これでは労働者の命も乗客の安全も守れません。残業上限の基準などの抜本的見直しが急がれます。

 軽井沢事故を受け、政府は昨年の国会に(1)5年ごとの更新制導入(「安全投資計画」などの作成をバス事業者に義務付け)(2)輸送の安全確保命令に従わない事業者への罰則強化などを内容とする道路運送法改正案を提出、同改定法は全会一致で成立しました。日本共産党は「法令違反への抑止力がどの程度向上するか、厳しく監視する必要がある」と表明しました。政府や業界の真剣な対応が求められます。

 旅行会社が低運賃や無理な運行をバス会社に押し付ける“買いたたき”の根絶は不可欠です。旅行会社の発注者の責任を明確化し、法令による監督指導と罰則を強化することは待ったなしです。

「規制緩和」から転換を 

 軽井沢事故で娘を奪われた遺族は、“過度な利益の追求、安全の軽視など社会的問題、ひずみによって発生した”と悔しさをにじませました。27人死傷の大阪府吹田市の事故(07年)、46人死傷の群馬県内の関越道事故(12年)など重大なバス事故発生のたび、政府は「再発防止」を強調してきました。悲惨な事故をこれ以上起こさないために、痛苦の教訓を踏まえ、安全を置き去りにした「規制緩和」路線からの転換こそ必要です。


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