2016年8月16日(火)
ボルト3連覇 陸上男子100
錦織「銅」
【リオデジャネイロ=五輪取材団】リオデジャネイロ五輪第10日は14日、陸上男子100メートル決勝が行われ、ウサイン・ボルト選手(ジャマイカ)が9秒81で、トラック競技で史上初の3連覇を遂げました。2位は9秒89のジャスティン・ガトリン選手(米国)。準決勝に進んだ日本の山県亮太選手は10秒05、ケンブリッジ飛鳥選手は10秒17で、ともに決勝進出を逃しました。
男子400メートルでウェード・ファンニーケルク選手(南アフリカ)が43秒03の世界新記録で金メダル。17年ぶりに記録を塗り替えました。
女子マラソンで日本勢は、福士加代子選手が2時間29分53秒で14位になったのが最高。ケニアのジェミマ・スムゴング選手が2時間24分4秒で激戦を制し、同国に初のメダルをもたらしました。
テニス男子シングルス3位決定戦で、錦織圭選手がラファエル・ナダル選手(スペイン)を破って銅メダルを獲得。1920年のアントワープ大会以来96年ぶりの快挙です。
レスリングの男子グレコローマンスタイル59キロ級で太田忍が銀メダルを獲得。
卓球団体では日本女子が準決勝でドイツに2―3で惜敗し、3位決定戦に回りました。男子は準々決勝で香港を破って4強入り。
人類の究極に迫る疾走
クリーンな競技者として
勝ち誇るように胸をたたいてフィニッシュラインに飛び込んだ。「不滅の存在になりたい」。その思いを凝縮した初戦の100メートル決勝で、ボルトが圧巻の走りを見せた。
“稲妻”の異名のような力走に、リオの夜は沸いた。先行したガトリンを中盤以降でとらえ、さらにギアを一段アップ。大きなストライド(歩幅)を一歩踏み出すごとにぐんぐん加速した。
200メートル、400メートルリレーとあわせた3大会連続3冠へ上々の滑り出し。「すべては正しい方向に進んでいる。自分を誇りに思うし、完璧な出来だった」と歓喜に浸った。
リオが最後の五輪と公言。196センチの体に、ひずみときしみが生じていた。背骨が湾曲する病気に、骨盤の大きな傾きが左太もも裏の筋肉に負荷をかけていた。年齢による筋力の衰えも加わり、国内選考会決勝は故障で欠場した。重圧から人に追いかけられる夢に悩まされ続けた。
それでも、逃げなかった。「人生には多くの試練がある。でも目標に向けて一生懸命頑張れば必ず達成できる。僕も自分自身を限界まで鼓舞して、それが報われてきたんだ」
その生きざまは、ドーピングへの失望に覆われたスポーツ界に光彩を放つ。ロシアによる国家ぐるみの違反が発覚。世界最速を競ってきたタイソン・ゲイ(米国)やガトリンらも信頼を裏切ってきた。
その対極として、ボルトはクリーンな競技者の象徴であり続けた。人類の究極に迫るその疾走に、スポーツの真価が詰まっている。(勝又秀人)