2016年7月29日(金)
きょうの潮流
NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」。主人公の雑誌づくりのモチーフとなったのが、日本で最初に「商品テスト」を手がけた『暮しの手帖』です。1954年、ソックスから始まったテストは、高度経済成長に伴い冷蔵庫やクーラーまで対象にしました▼「商品テスト」は絶対ヒモつきであってはならない、と雑誌に広告を載せないことが原則。結果は商品名をあげて公表するため、テストは徹底しています。トースターのテストで焼いた食パンは4万3088枚。ミシンのテストでは、各機種1万メートル、布を縫うのに足かけ3年かけています▼故・花森安治編集長いわく、「〈商品テスト〉は、消費者のためにあるのではない」「生産者に、いいものだけを作ってもらうための、もっとも有効な方法なのである」(「商品テスト入門」)▼商品の洪水の中で見る目を鍛えよ、というのは幻想。メーカーが毒になる品を作らなければ、それで事はすむのだと▼花森さんが生きていたら、今の「ポケモンGO」騒動をどう見たか。画面上に現れる架空の生き物「ポケモン」を捕獲するスマホ向けゲームで、配信が始まるや否やトラブル続出。予見された事態で、海外ではポケモン捕獲のために他人の家に侵入した少年が射殺される事件まで起きています▼〈ゼニさえもうかれば、国民の健康もモラルも、知ったことじゃない、というゼニモウケ・アニマルの面目まる出しである〉(『花森安治 灯をともす言葉』)。“使い方注意”で済むのか。立ち止まって考えたい。