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2016年7月28日(木)

主張

ドーピングと五輪

スポーツに高潔性を取り戻せ

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 ロシアの国家機関ぐるみのドーピングと隠ぺい工作をめぐり、リオデジャネイロ五輪を目前にして国際オリンピック委員会(IOC)が出した最終判断の声明(24日)が、新たな議論を呼んでいます。

ロシアの組織的責任は

 最大の焦点になっていたのが、ロシアの組織的な責任の問題でした。この間、世界反ドーピング機関(WADA)は、ロシアの陸上競技連盟にとどまらず、ソチ冬季オリンピックなどで組織的なドーピング検体のすり替えがあったと認定、IOCに「リオデジャネイロ五輪からのロシアの全面排除」を勧告していました。

 これに対し、IOC声明はロシア・オリンピック委員会などの組織責任は問わず、「個人が持つ正当な権利とのバランスをとる」(バッハIOC会長)としました。慎重を期すのは当然ですが、現時点でも選手や関係機関からの内部告発がされ、WADAの調査で隠ぺい工作が明らかにされていることから、なんらかのペナルティーが科せられるべきでした。

 オリンピック憲章は「IOCの使命と役割」のなかで、「ドーピングに対するたたかいを主導し、いかなる形態の競技の不正操作、および関連する不正行為に対抗する行動をとることにより、クリーンな選手とスポーツの高潔さを保護する」と規定しています。これを順守し監督するのが各国の国内オリンピック委員会(NOC)の責務です。ロシア・オリンピック委員会はその資格を欠いていると言わなければなりません。

 ドーピングにクリーンな選手への救済措置も焦点でした。この点で、IOCの声明では、「ロシア選手は各国際競技団体(IF)が求める条件を満たした場合、リオデジャネイロ五輪参加が認められる」ことにし、その潔白には「国際的な検査のみが採用される」としました。

 これでロシア選手の参加についてはIFの判断にゆだねることになり、一律的な「全面排除」は回避されました。これを受け、国際陸上競技連盟は既定の決定通りにロシア選手全員の不参加の方針を変えていませんが体操、柔道などの多くは参加を認める方向です。

 ドーピングの不正とたたかい、潔白を主張し、過去の処分を受け入れた選手は救済され、オリンピックの舞台で活躍できるように保障されなければなりません。「スポーツをすることは人権の一つで、すべての個人はいかなる種類の差別も受けることなく、オリンピック精神に基づき、スポーツをする機会を与えられなければならない」(オリンピック憲章)のです。

 ところが、当初、内部告発をしたロシアの陸上競技選手に参加容認の態度を取ってきたIOCは、国際陸上競技連盟の決定すら覆して、「過去にドーピング違反で処分を受けた選手は出場できない」としました。これでは告発した選手を守れず、重大な禍根を残します。

選手の人権擁護の舞台を

 問題を抱えたまま、リオデジャネイロ五輪は8月5日、開幕を迎えます。それだけにオリンピックの舞台が「反ドーピング」を力強く宣言し、選手の人権擁護に本腰を入れる機会になることが問われています。そして、選手たちが疑心暗鬼にならず、高潔の精神を持って競技に全力を発揮することを願ってやみません。


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