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2016年7月6日(水)

米軍属を4分類定義

日米両政府 地位協定改定せず

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 日米両政府は5日、元海兵隊員の米軍属が沖縄県で起こした女性暴行殺人事件を受け、日米地位協定の特権対象となる「軍属」の定義を四つに分類(別項)することなどを柱とする「再発防止」策を発表しました。岸田文雄外相と中谷元・防衛相、ケネディ駐日米大使とドーラン在日米軍司令官が外務省飯倉公館で会談し、共同発表文を合意しました。

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 ただ、特権の対象から外れる米軍関係者の人数は現段階で未定で、細部の詰めの協議に今後数カ月かかります。

 また、日本側は「法的拘束力のある政府間文書を目指す」としていますが、沖縄県が求める地位協定の抜本改定には着手せず、特権自体はそのまま残ります。この時期の発表は、参院選をにらんだ露骨な世論対策です。

 地位協定上の「軍属」とは、在日米軍に「雇用、勤務、または随伴」する、軍人ではない米国人を指します。基本的には米軍や米政府の被雇用者ですが、「技術アドバイザー・コンサルタントで、在日米軍の公式招待や在日米軍のための日本滞在者」も含まれています。

 また、特権対象者の適格性を定期的に審査するため、日米合同委員会の下に新たな作業部会を設置することでも合意しました。

 日本政府によると、軍人・軍属・家族を合わせた在日米軍関係者は2013年3月末時点で10万5677人で、そのうち軍属は5203人(4・9%)。特権から外れる軍属は在日米軍関係者全体のわずか数%とみられます。

 また、中谷防衛相は今年3月末時点で軍属は約7000人に増えており、そのうち事件被告のような請負業者が約2000人いると説明。「(今後の)協議で人数が減るか、増えるか、予断をもってお答えできない」と述べました。

軍属と民間業者あいまい

解説

今回、日米両政府が米軍属の範囲見直しに着手したきっかけは、沖縄県内での女性暴行殺人事件の容疑者が日米地位協定上の特権を不当に得ていた可能性があったからです。

 容疑者は米空軍嘉手納基地内でインターネット関連会社の社員として勤務していたとされます。本来は地位協定14条の地位を有する者(特殊契約者)に該当しうるのに、米政府が雇用する「軍属」としての地位を与えられていました。岸田文雄外相は5日の共同会見で、容疑者のような立場の者は軍属から除外される考えを示しました。

 中谷元・防衛相の説明によれば、今年3月時点で米軍属は約7000人存在しますが、この中には「請負業者」約2000人が含まれています。この「請負業者」の区分がきわめてあいまいなのです。

 軍属は米軍人と同様、日本国内で犯罪を行っても、「公務中」であれば米側に第1次裁判権があり、米側から日本側に身柄を引き渡さない限り、日本側は裁くことができません。一方、14条の該当者はそのような特権を有していません。

 米国防総省は軍の民営化や業務の外注化を急速に進めており、在日米軍基地には、今回の事件の容疑者を含め、多くの民間業者や社員が出入りしています。これらの者の多くが「軍属」扱いされ、特権を与えられてきたとみられます。

 ただ、これら民間業者を軍属から除外しても、特権を有した軍属は相当数残ります。「技術アドバイザー」や「コンサルタント」など、米政府が直接雇用していない者も軍属としての地位が与えられます。このままでは「軍属」の定義で米側の強い裁量権が残され、いずれ形骸化するおそれもあります。

(竹下岳)


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