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2016年6月7日(火)

保育事故と規制緩和 (上)

認可外で事故多発

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写真

(写真)けんちゃんの遺影を見つめる母親の有紀さん。事故後「怒りだけで生きてきた」といいます

 保育施設で重大事故が続いています。昨年だけで14人の子どもが命を落としています。くり返される悲劇の背景に“規制緩和”があります。安倍政権は今、子どもを詰め込み、保育士の専門性をさらに緩めようとしています。(芦川章子)


 テーブルに置かれた小さな骨つぼ。遺影の中では頬のふっくらした男の子がほほ笑みます。絵本や靴、お気に入りだったというミニカーや人形が並びます。

 母親の有紀さん(38歳)が「けんちゃん」とよぶ男の子は今年3月11日、通っていた事業所内保育所で昼寝中に亡くなりました。1歳2カ月でした。

 「表情が豊かでよく笑う子でした。やっと授かった子だったんです。愛情をかけて育てました」と有紀さんは静かに話します。

2時間半放置

 保育所は、東京・中央区にある認可外の保育施設「キッズスクウェア日本橋」です。七つの企業が共同で設けた保育施設です。いわば企業主導型保育の先取りです。

 有紀さんは3月からの仕事復帰のため、自宅近くの認可保育所6カ所に申し込みましたが全て入れませんでした。同施設には2月から預けていました。

 有紀さんが施設側から受けた説明によると、けんちゃんは「泣くから」と別室で1人寝かされました。寝かしつけたのは保育士資格のない非常勤の職員。1カ月に1日ほどしか来ない人でした。園長の指示でうつぶせ寝にしたといいます。

 その後、職員たちは離れ、2時間半近く、顔や呼吸などの確認はしていませんでした。

人工呼吸せず

 午後2時すぎ、早く迎えにいった有紀さんは、ぐったりとした息子に対面しました。誰も人工呼吸をしていなかったため、有紀さんが施しました。すでに死斑が出ていました。あごや首には呼吸のため、もがいたと思われる擦り傷もありました。「2時間半近く、誰にも見られずに苦しみながら死んでいった。かわいそうで、かわいそうで、たまらない」

 同施設の保育士の経験歴は園長をはじめ1〜4年程度。人工呼吸の経験がある職員はいませんでした。

 国は保育指針で、乳幼児のうつ伏せ寝は窒息死などにつながることから避けるべきだと明記。都は睡眠中は10分おきに呼吸を確認するよう定めています。

 報告のあった死亡事故は15年だけで14件。うち10件は認可外です。この間の報告では12年間に174人が亡くなっています。

 「毎月どこかの保育所で子どもが亡くなっていることになる。それも何年も。こんなことは終わりにしてほしい」。有紀さんは搾り出すような声で訴えます。(つづく)


 企業主導型保育 2日に閣議決定した「ニッポン一億総活躍プラン」の保育政策の柱。待機児童5万人分の受け皿として、施設整備に800億円の予算を計上。企業が直接設置・契約します。全国保育団体連絡会の実方伸子副会長は「今回、事故のあった施設は企業主導型保育の先取りともいえます。市町村が関与せず、責任の所在や施設基準もあいまいです。保育の質の低下を招くものです」と批判します。


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