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2016年5月8日(日)

主張

総合支援法改定案

政府は障害者との約束を守れ

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 安倍晋三政権が、今国会に提出した障害者総合支援法改定案について短時間審議での早期成立を図る動きを強めています。しかし、同改定案は障害者と家族らが改善を求めていた内容から大きくかけ離れており、関係者は「私たちとの約束を守っていない」と批判の声を上げています。障害者・家族の願いにこたえず、改定案を強行することはやめるべきです。

深刻な「介護優先原則」

 障害者総合支援法は、障害が重い人ほど経済的負担が重くなる「応益負担」などを盛り込み、国民の批判を浴びた障害者自立支援法に代わるものとして2013年に施行されました。ところが同法は、本来廃止されなければならない自立支援法を、名前を変えただけで存続させた中身になっており、障害者や家族から「裏切られた」と批判されているものです。

 今回の改定は、これらの批判を受け法律に盛り込まれた「3年後の見直し」に基づくものですが、障害者の願いに応じない政府の姿勢を浮き彫りにしています。

 例えば65歳を迎えた障害者が半ば強制的に介護保険に移行させられる「介護優先原則」を変えようとしていません。介護保険を適用されれば、障害者はそれまで無料だった利用料が一部自己負担にされたり、受けられるサービスも切り下げられたりするため、65歳を境に生活の質と水準が引き下がることが大問題になり、岡山市や千葉市で、「優先原則」の不当性を訴える訴訟も起きています。

 改定案では「負担軽減」を盛り込みましたが、根本的解決にならないどころか、介護保険への原則移行を前提にしています。「介護優先原則」の撤廃に踏み出すことこそ急がれます。

 改定案には、グループホームなどを退所し1人暮らしを始めた障害者に定期巡回や訪問で相談・助言をする「自立生活援助」サービスの新設や、入院時にも長時間生活介助や身体介助を行う「重度訪問介護」が使えるようにすることなどを盛り込みましたが、対象者や利用期間を限定しており、きわめて不十分です。抜本的な充実を行うことが求められます。

 いま必要なことは、自立支援法違憲訴訟をおこした原告団・弁護団と国が10年の和解時に交わした「基本合意」と、障害者権利条約を土台に新法のあり方を示した「骨格提言」(11年)を踏まえた法や制度をつくることです。

 国は基本合意したなかで「心から反省の意を表明」し、憲法に基づく障害者の基本的人権の行使を支援する新法制定を約束しました。総合支援法制定時にも、多くの障害者らの批判を受け、「(法見直しでは)骨格提言に沿って障害者の意見を反映させて検討する」「骨格提言は段階的・計画的に実現したい」などと述べていました。障害者や家族と結んだ約束を反故(ほご)にし続けることは許されません。

尊厳守る制度づくりこそ

 社会保障予算の大幅削減をすすめる安倍政権のもと、総合支援法改定の議論のなかで、障害者・家族に対して「自助・共助」を求め、給付と利用の抑制の方向が示されていることは重大です。障害者福祉をはじめ医療・介護の制度改悪と負担増を許さない世論と運動をさらに広げ、国民の暮らし、人間の尊厳を守る社会保障拡充の政治を実現することが急がれます。


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