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2016年5月2日(月)

立憲主義破壊と「政治改革」

政治の危機見ない調査会答申

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(写真)小選挙区制を温存したまま衆院定数を10削減する選挙制度関連法案を可決した衆院倫選特委=4月27日

 安倍自公政権は戦争法を、小選挙区制による「虚構の多数」で強引に成立させました。民意をゆがめる小選挙区制の廃止は、立憲主義の回復にとっても重要な課題となっています。ところが、自民・公明両党は、現行衆院小選挙区比例代表並立制の維持と議員定数10削減(小選挙区6・比例4)を提案した衆院選挙制度調査会の答申(1月)にもとづく衆院選挙制度関連法案を今国会で強引に成立させようとしています。

 衆院選挙制度調査会の答申について東海大学の永山茂樹教授(憲法学)は「そもそも憲法がどのような国会のあり方や物事の決め方を求めていて、それを実現するために選挙制度・議員定数はどうあるべきかが考えられるべきです。しかし、その検討が全くない」と指摘します。

 日本国憲法は、衆参のいずれかの総議員の4分の1の議員の要求があれば、内閣は臨時会を召集しなければならないと規定(53条)するなど、両院制を採用する国の中でも日本は参院(第2院)に比較的強い権限を認めているとも言われます。

少数意見排除

 こうした構造を前提に永山氏は、憲法が想定する国会審議について「少数派の意見を尊重して慎重に審議し、多数派で短期間に物事を決めてはならないという発想です」と指摘。これに対し、小選挙区制は「少数派が国会に存在しにくくする仕組み。小選挙区制度では少数派の意見を大事にする憲法の求める国会の在り方と違ったものになります」と強調します。

 小選挙区制のもとでの「決められる政治」とは、少数意見排除、多様な民意の排除をもたらします。さらに今、小選挙区制は、戦争法や原発再稼働、沖縄の米軍新基地建設に反対する多数意見すら排除して突き進む独裁政治に基礎を与えています。

 永山氏は、答申が衆院小選挙区比例代表並立制について「深刻な事態にあるとは考えられない」としていることを「理解し難い」と批判します。

定数10の削減

 しかも答申は、民意を忠実に反映させる比例代表の定数も含めて定数10の削減を提起しています。

 しかし、日本の国会議員数は、人口比でみるとOECD(経済協力開発機構)加盟国中最低の水準にあります。小選挙区制・二大政党制の「母国」であるイギリスでも、下院(衆院)の定数は650(日本は475)です。これ以上の定数削減は、国会の本来の立法機能を不全にし、行政監督機能を弱めるもので、憲法の機能不全をもたらします。答申自身も、「定数を削減する積極的理由や理論的根拠は見出し難(い)」と述べています。

 永山氏は、国会の議論が委員会で行われることが多いこともあげ、「少数政党でも国会のすべての委員会に参加し、その意見が議論の俎上(そじょう)にのらなければいけないはず。議員総定数も、そうした観点から考えられるべきです」と語っています。(前野哲朗)


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