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2016年4月13日(水)

米無人機攻撃の横暴

地球の裏側で普通の人が殺される

民間人965人を殺害

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 オバマ米政権は「テロ対策」と称してパキスタンやイエメンなど世界各地で無人機攻撃を続けています。このほど米西部ネバダ州で、無人機攻撃についてのシンポジウムが開かれ、無人機の遠隔操作が行われている米空軍基地前では抗議行動もありました。米国による無人機攻撃の実態と問題点を探ります。 (米西部ネバダ州インディアンスプリングス=島田峰隆 写真も)


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 ネバダ州の歓楽都市ラスベガスから北西に車で約40分のインディアンスプリングス。薄茶色のごつごつした岩山が連なる砂漠の中に広がるのが、無人機を遠隔操作するクリーチ空軍基地です。砂煙の舞う基地前に立つと、うなるような低い音を立てて上空を無人機が旋回していました。

この町から指令

 「あの山の頂上に白い巨大な板があるのが見えるかい? あれを標的に見立てて操縦士が無人機の訓練をしている。山が連なる地形はアフガニスタンに似ているから、彼らには絶好の練習場所だ」

 地元に住むルベン・ベルトランさん(60)が近くの山を指さします。「この町から指令が出て地球の裏側で普通の人が殺されていると思うと悲しい。やめさせなければ」と力を込めました。

 クリーチ空軍基地は、アフガンやパキスタン、イエメン、ソマリアなどで偵察や攻撃を行う無人機を遠隔操作する最大の拠点の一つ。米研究所「スティムソン・センター」によると、無人機の基地は中東のカタールやアフリカのジブチなど、少なくとも12カ国に設置されています。

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(写真)クリーチ空軍基地の前の道路に無人機攻撃の犠牲者の名前を並べて抗議する人たち=3月31日、米ネバダ州インディアンスプリングス

住民の怒り増幅

 オバマ政権は、ブッシュ前政権が始めた無人機攻撃を急増させました。英国のNPO「調査報道局」によると、2004年からこれまで、米中央情報局(CIA)はパキスタンで423回の無人機攻撃を実施。その約88%はオバマ政権によるものです。その結果、最大で約4000人が殺害され、うち965人がテロ組織とは無関係の民間人とみられます。

 元米空軍兵士で無人機作戦に関わったショーン・ウェストモーランド氏は「実際には誰を殺しているかははっきりしない。決定的な証拠に基づく攻撃だというが、遠隔操作の画面だけでは分からない。結婚式や葬式がミサイル攻撃を受けている。住民の怒りを増幅し、テロ組織を強化してしまう」と批判しました。

秘密作戦 標的確かめず攻撃

 米政府は無人機攻撃を秘密作戦として実施し、法的根拠や犠牲者数、攻撃地点、標的などの情報をほとんど公表していません。

 人権団体「レプリーブ(刑執行の猶予)米国」の弁護士、シェルビー・サリバンベニスさんは、▽容疑者を裁判にかけずに殺害する▽民間人と戦闘員を区別しない▽米国への“差し迫った脅威”の有無がわからない―などの問題点を指摘。「米政府は自分の都合の良いように国際法をゆがめている」と批判します。

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(写真)クリーチ空軍基地の前で無人機攻撃の中止を求めて宣伝する人たち=3月31日、米ネバダ州インディアンスプリングス

公開求めて訴訟

 オバマ大統領は2013年5月、“無人機攻撃は合法だ”とし、「民間人犠牲者が出ないというある程度の確実さがあること」を攻撃の基準としていると述べました。米人権団体などは、合法だとする法的根拠を示した文書の公開を求めて訴訟を起こしています。

 米研究所「ニュー・アメリカ」によると、攻撃能力のある無人機を所有あるいは技術を得た国は19カ国。米紙ニューヨーク・タイムズは最近の社説で「他国が無人機を持つなかで米国は危険な前例をつくった。正当な理由も示さずに上空から人々を殺害することが許されるというメッセージを送っている」と指摘し、文書の公開を促しました。

 また最近注目されているのが無人機の故障や事故です。米紙ワシントン・ポストによると、無人機「リーパー」と「プレデター」は昨年、それぞれ10件の重大事故を起こしました。昨年2月にはソマリア上空で故障し、操縦士がジブチにある基地に戻そうとしたものの間に合わず海に墜落。14年12月にはアフガニスタンでミサイルを搭載した無人機が飛行中に故障し、意図的に山中に墜落させました。

 米政府が無人機に固執する背景について、米法曹団体「ナショナル・ロイヤーズ・ギルド」(NLG)のマージョリー・コーン元会長は「米兵が犠牲にならないため、厭戦(えんせん)気分が強い国内で政治的な利点があるからだ」と指摘。「無人機の活用で米政府は法律をずたずたにした。政策を全面的に見直さなければテロのない安全な世界をつくることは難しい」と話します。

「識別特性攻撃」

 「『宗教学校の先生がテロ組織と関係しているようだ』となると、数時間から数カ月にわたり無人機で偵察する。その情報に基づいてミサイル攻撃をするが、これは有害無益だ」

 CIA元高官で無人機を担当したクリストファー・アーロン氏は、アフガンでの経験を語ります。同氏が問題にしているのは、オバマ政権が進める「識別特性攻撃」です。

 無人機は高度数千メートルから車両や人の動きを追跡し、得られた動画を蓄積、転送できる監視システムを搭載しています。「識別特性攻撃」はこのシステムを使い、テロに関与できる年代とみられる人物の偵察を続け、身元が特定できなくても、テロリストに特徴的な行動をとったという理由だけで攻撃できるというものです。

 人権・平和団体は、あまりに曖昧な基準だと批判。CIAに白紙委任を与え、民間人犠牲を増やす原因になっていると指摘します。

 昨年1月には、米無人機がアフガンとパキスタンの国境地帯で行った爆撃で、国際テロ組織アルカイダが人質にしていた民間の援助関係者2人が死亡しました。

 昨年6月にはイエメンでの無人機攻撃でテロ組織「アラビア半島のアルカイダ」の指導者が殺害されました。この時は標的とした“戦闘員”集団の中に同指導者がいるかどうか分からないまま、CIAが攻撃に踏み切り、結果的に殺害につながったと、米高官がワシントン・ポストに明らかにしました。

 米メディアによると、いずれも識別特性攻撃として実施されました。NLGのコーン元会長は「全くのギャンブルだ」と憤ります。

 11月の大統領選に名乗りを上げている民主、共和両党の有力候補は、いずれも無人機攻撃を認める立場です。ネバダ州で無人機反対行動に取り組むブライアン・テレルさん(59)は「政府が無人機攻撃を広げる以上の規模で反対運動を広げる必要がある」と強調しました。


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