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2016年3月22日(火)

「思いやり予算」永久化狙う

拡大・延長・譲歩の歴史

「湾岸」時には派兵と引き換えに

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 たとえ一歩でも原則を踏みはずせば、際限なく切り崩されていく―。米軍「思いやり予算」拡大の歴史が、それを証明しています。

 在日米軍の活動経費について、日米安保条約に基づく地位協定24条は「日本国に負担をかけないで合衆国が負担する」と明記しています。この原則が崩れるきっかけになったのが沖縄返還交渉でした。

大平解釈が基準

 返還協定の交渉に関する1971年6月9日の日米外相会談で、米側は基地改修費6500万ドルを日本側に負担させるため、地位協定24条の「リベラルな解釈」を要求。国会で問題になった際、大平正芳外相(当時)は、地位協定の「リベラルな解釈」を「理解できる」と述べました(73年3月13日、衆院外務委員会)。これが、地位協定の解釈拡大による「思いやり予算」の原型といえます。

 日本政府は米側の圧力に屈して、77年12月22日に基地従業員の福利厚生費62億円を負担し、78年度から支払うことで合意しました。ところが米側はそのわずか18日後、次の要求に踏み出しました。

 最近公開された在日米大使から米国務省への78年1月9日付公電は「『大平解釈』が日本側で支配的になっている」とした上で、「われわれは追加的な計画、とくに住宅を日本側に提案するよう薦める。日本側がさらなる支援に対価を払うことは可能だ」と述べています。

 つまり、日本側がいったん地位協定の「リベラルな解釈」を受け入れた以上、後はいくらでも要求を広げられる、という見方です。

戦闘関連施設も

 事態はその通りになりました。日本は79年度から、住宅や娯楽施設、さらに滑走路など戦闘関連施設まで施設建設に着手しました。

 80年代に入り、米側の要求は拡大の一途をたどり、もはや「解釈」は限界に達します。

 そこで87年、労務費のうち時間外手当など8手当の支払いを定めた5年間の「特別協定」を締結。政府は当時、「特例、暫定的な一時的措置」などと説明していました。ところが、92年度の期限も終了しない91年に新協定が締結されました。

 その背景には、90年8月に発生した湾岸危機がありました。最近公開された90年9月29日の日米首脳会談の記録によれば、海部俊樹首相(当時)は、自衛隊の中東派兵は憲法解釈上できないと主張。ブッシュ大統領(同)は「憲法上の制約を全面的に理解する」と応じました。すると突然、大統領は「もし接受国支援(米軍への財政支援)を91年に増大すれば、わが国に良いシグナルを送ることになるだろう」と切り出しました。海部氏は「米国のために最大限努力する」と応じました。

安倍政権下でも

 米政府は、自衛隊派兵ができない日本に対する米議会の不満をちらつかせて特別協定の継続にこぎつけたのです。その後、協定は延長に延長を重ね、費目も労務費の基本給、基地や米軍住宅の水光熱費、米軍の訓練移転費と拡大。安倍政権の下でさらに5年間、延長が狙われています。

 地位協定上の根拠もなく、国際的にも異常な「思いやり予算」を事実上永久化する特別協定の延長は認められません。

特別協定なくせば…

大学の学費半額可能

 2015年度の米軍「思いやり予算」は約1900億円で、うち約1400億円が特別協定分です。日本共産党は17日、大学の学費・奨学金の抜本的改革に関する政策を発表。年間1100億円の支出で国公私立大学の学費を10年間で半額にできるとしました。

 「思いやり予算」特別協定は、日本政府の解釈からしても、日米安保条約上、支払い義務がありません。これをなくしただけで、学費半額は十分に可能です。

(竹下岳)

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