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2016年3月16日(水)

ロシア 軍に撤退命令

シリア内戦 和平協議を再開

一部基地など従来通り機能

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 【カイロ=小玉純一】ロシアのプーチン大統領は14日夕、シリア駐留ロシア軍の主要部分の撤退開始命令を発表しました。これを受け、シリア西部ラタキアに駐留する空軍機の本国への撤退準備が開始されました。ただしラタキアの空軍基地とタルトゥスの海軍基地は従来通り機能させます。


 プーチン氏の発表に先立ち、国連は同日、ジュネーブでシリアの和平協議を再開しました。国連のデミストゥラ特使がシリアのアサド政権の代表団と会談。15日には、反体制派の交渉団と会談する予定です。

 プーチン大統領はショイグ国防相、ラブロフ外相と大統領府で会談。「ロシア軍の効果的活動は和平協議の開始の条件をつくった」「国防省と軍の任務は達成された」と語り、15日からの軍の撤退、和平におけるロシア外交の強化を指示しました。

 ロシア軍は昨年9月からアサド政権支援のため、シリアでの空爆作戦を実施していました。

 ロシア大統領府が記者団に伝えたところでは、プーチン大統領はシリアのアサド大統領に電話し、撤退を伝えました。和平協議進展の最大の障害となっているアサド大統領の今後について、両氏は話し合いませんでした。

 シリア大統領府は声明で、アサド大統領がロシア空軍の削減に同意しており、両国の調整がなされていることを強調しました。

 プーチン大統領とオバマ米大統領は、同日、シリアについて電話で会談。ロシアの発表では、両氏は政治解決のプロセスの強化を求め、米国の発表ではオバマ氏は暴力の停止へ政治的移行を強調しました。

解説

前向き機運「正念場」

 シリアの和平協議再開にあたり国連のデミストゥラ特使は会見で「正念場だ」と述べました。

 米ロ主導で停戦に合意し2週間が経過。政権と反体制派の戦闘が「9割減少」(ケリー米国務長官)し、前向きの機運があるもとでの協議です。ただしアサド大統領の地位をめぐり両者は正面から対立しており、協議の着地点が見通せる状況でもありません。反体制派はアサド大統領の即時退陣を主張し、かたや政権側は大統領の地位の議論の拒否を明らかにしています。同特使は「失敗すれば、さらにひどいたたかいになる」と語りました。

 そこへ、ロシア軍部分撤退の発表です。緊張緩和策を示して協議決裂を避け、十分に関与した内戦へのこれ以上の深入り、地上戦を避けたい思惑も見えます。

 現在、シリアは主要には三つの勢力の抗争です。アサド政権とこれを支援するロシア、イラン。反体制派とこれを支援する米欧とトルコ、サウジアラビア、カタール。そしてISなど過激組織です。

 アサド政権は昨年、反体制派などの攻撃を受け、危機に陥りました。これを救ったのが、ロシア軍の昨年9月からの空爆でした。いまや政権軍は反体制派や過激組織に対し攻勢に出ています。

 ロシアにとってシリアは中東での唯一の足場です。西部に海軍と空軍基地を置いてきました。基地を担保する政権の防衛は至上命令でした。ロシアが停戦に入ったのも、基地を保障する政権の防衛にひとまず成功したと判断したと読めます。

 同時にロシアはこれに代償を払いました。空爆作戦で民間人死者を多数出したというシリア内外からの強い批判です。戦闘に再突入すれば、人道的悲劇の罪をいままで以上に背負うことになります。

 (カイロ=小玉純一)


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