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2016年2月5日(金)

きょうの潮流

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 「おもねらず/なびかず/大勢に流れていかず」。詩人の金時鐘(キムシジョン)さん(87)に近著『朝鮮と日本に生きる―済州(チェジュ)島から猪飼野(いかいの)へ』についてインタビューした時、本の扉に書いてくれた言葉です▼自分の感受性を磨き、自分の頭で考えよ、批評精神をもって現象を見極めよ、と突きつけられているようです。金さんのこの本が、第42回大佛(おさらぎ)次郎賞を受賞しました。過酷な半生の回想記です▼日本統治下の朝鮮・済州島で育ち、1945年の解放後、民族運動に身を投じた金さん。48年、米軍政の祖国分断に抗して島民が蜂起し、5万人以上が虐殺された済州島4・3事件に関わり、日本に逃れてきました。大阪・猪飼野での同胞との暮らし▼いちずな皇国少年だった詩人に、植民地支配は日本の唱歌や童謡の優しい韻律として染み入っていました。流麗で巧みな日本語に背を向け、その叙情から切れることに苦闘してきた自身の詩作を、内なる日本語からの解放だったと言います▼日本で生きる意味を問い続け、「在日を生きる」という言葉を生み出しました。祖国の分断と対立の下で、南と北が混在し、共に暮らしてきたのは在日しかいない、これが在日の実存であり、同族融和を先駆けて実現する展望をつくりださなければならない、と▼大佛次郎『敗戦日記』には「この現実を見るのを拒む者たちがいるだけである」という一文があります。痛みにあらがい、血肉を削るようにして明かされた歴史の真実を凝視したい。日本を戦前に戻さないために。


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