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2016年1月9日(土)

主張

笹子事故判決確定

インフラ老朽化への対応急げ

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 山梨県の中央自動車道笹子トンネルで2012年12月に起きた天井板崩落により9人が死亡した事故の訴訟で、トンネルを管理する企業の過失責任を認定し遺族に対する賠償支払いを命じた昨年12月の横浜地裁判決が確定しました。被告の中日本高速道路などと遺族の双方が控訴しなかったためです。今回の判決は、トンネルなどインフラ老朽化が各地で問題となる中、施設管理に責任をもつ企業や国の安全対策の強化が急務であることを浮き彫りにしています。

公共事業政策への警鐘

 この訴訟は、笹子トンネル内を自動車で走行中に事故にあった犠牲者の遺族が中日本高速などの責任を追及し起こしたものです。12月22日の横浜地裁判決は「天井板の老朽化を認識していたのに改修しなかった」「適切な点検によって事故を回避する責任を怠った」として、中日本高速などに計約4億4000万円の損害賠償を命じました。危険を放置した企業の責任を厳しく指摘した判決が確定したことは、重いものがあります。

 同時に、この判決は国の公共事業政策への警鐘でもあります。笹子事故の背景には05年に小泉純一郎内閣が行った「日本道路公団の分割民営化」がもたらしたコスト削減最優先の姿勢があります。政府の道路公団等の「民営化推進委員会」は02年の「意見書」で、コストを「おおむね3割縮減することを目指す」と明記しました。03年に道路公団が作った「新たなコスト削減計画」は「01年度には、1996年度の標準的なコストと比較して、建設コストでは11・4%、管理コストで13・8%の縮減を図った」としています。

 天井板のつり下げ金具を固定するボルトの緩みなど外から見えない不具合の点検方法は「近接目視」や「打音検査」が一般的なのに、笹子トンネルでは中日本高速が、それを行っていなかったことが問題とされています。国土交通省の「トンネル天井板の落下に関する調査・検討委員会」が13年にまとめた報告書も、致命的な事故に至った要因として、「12年間にわたり…天頂部接着系ボルトの状態について明確な裏付けがなく、近接の目視及び打音の実施が先送りされてきた」ことを挙げています。

 高速道路の「要補修損傷件数」は、高速会社3社で07年に17万9100件だったものが11年には55万4800件へと3・1倍になっています。これに対し同3社の維持修繕費は07年の1916億円に対し11年は2133億円で1・11倍と横ばいです(日本共産党の穀田恵二衆院議員の調査)。コスト削減を優先して必要な維持修繕を怠っていたことは明らかです。

安全こそを最優先に

 国土交通白書09年版は「今後必要となる維持管理費、更新費についても、急速に増加していく」「高齢化した施設の割合が増大していくと、重大な事故や致命的な損傷等が発生するリスクが飛躍的に高まる」と記していました。なぜこの警告が生かされなかったのか。

 公共事業政策で大事なのは、国民の「命・安全、暮らし」に必要な事業は何か、優先すべきは何かを見定めることです。新規の高速道路や大規模再開発、巨大港湾は、優先度は高くありません。いま最優先しなければいけないのは、耐震対策や老朽化対策など既存の社会資本の維持管理・更新です。


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