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2015年12月24日(木)

診療報酬引き下げ

社会保障削減ありき

「医療崩壊」再来の危険

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 2016年度予算編成の焦点となっていた診療報酬について安倍内閣は、実質1・03%引き下げることを決めました。マイナス改定は08年度以来8年ぶり。消費税増税への対応分(増加分)を除くとマイナスだった前回14年度に続いて、実質2回連続のマイナス改定です。


 医療サービスの公定価格である診療報酬は、医師や看護師、薬剤師らの人件費や技術料にあたる本体部分と、医薬品や医療材料の薬価部分で構成されます。

 今回は本体部分を0・49%プラスにとどめる一方、薬価部分はマイナス1・33%。ただし、薬価部分は、削減幅を小さく見せるために計算方法を変更しており、従来の計算方法だと1・52%マイナスになります。

 塩崎恭久厚労相は、前回の本体部分は0・1%だったことから「(プラス幅は)前回の5倍で、大きな成果があった」と記者会見でのべましたが、医療現場の実態や要求には遠く及びません。

 厚労省の調査で、14年度の一般病院の損益率は3・1%減で、13年度から2倍近く悪化。診療所でも収益が悪化しています。

削減目標示され

 小泉内閣時代の02年度から08年度にかけて診療報酬が削減され、医師・看護師不足や病床の削減など深刻な「医療崩壊」が引き起こされ、いまだに回復していません。それにもかかわらず、報酬の連続削減を行うなど許されないことです。

 薬価引き下げ分を本体改定に充ててきたルールがホゴにされ、引き下げられたことも問題です。

 薬価引き下げ分の充当は、1972年の中央社会保険医療協議会の建議で提案され、2012年改定まで踏襲されてきました。ところが「財政難」を理由に前回改定から外され、今回も強行されました。

 厚労省調査でも、薬の公定価格が実際の取引価格を約8・8%上回っており(9月分)、本体部分の拡充をはかれることは明らかです。

 診療報酬の削減は、国の予算で社会保障費の自然増を毎年「5000億円程度」に抑え込むという「骨太方針2015」によるものです。

 厚労省は、高齢者の増加や医療技術の進歩などで年間1兆円規模が必要とされる自然増を、予算の概算要求で6700億円に圧縮しました。財務省はこれを5000億円まで削減するよう求めていました。

地域医療悪化に

 このため厚労省は、診療報酬で約1000億円を削減するとともに、予想以上に売れた医薬品の価格下げなどで約400億円を捻出。さらに全国健康保険協会(協会けんぽ)への補助金も約200億円減。これによって削減目標をほぼ達成しました。

 社会保障費の毎年2200億円削減で「医療崩壊」を招いた小泉「構造改革」路線が復活した形です。

 社会保障費に上限を設けて自然増まで徹底削減する路線は、今でも深刻な医師・看護師不足と病院の経営をさらに悪化させ、地域医療の崩壊に拍車をかけることは必至です。

 医療関係者はこぞって「医療は公共財であり、社会保障は生活の安定・安心をもたらすセーフティーネットだ。財源ありきで削減すれば地域医療の崩壊の再来になる」(日本医師会・横倉義武会長)とプラス改定を求めてきました。安倍内閣は、「新3本の矢」で「安心につながる社会保障」を掲げながら、社会保障の削減路線を突き進めば、国民との矛盾をますます深めることになります。 (深山直人)

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