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2015年10月8日(木)

2015 焦点・論点

「私の闘争宣言」

弁護士・元最高裁判事 浜田 邦夫さん

反知性の抵抗勢力による暗黒日本への逆コース阻止しよう

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 9月の参院安保法制特別委員会の中央公聴会で、公述人として戦争法案(安保法制)を「違憲です」ときっぱりと述べ、今の政治のあり方に「日本の民主主義の基盤が崩れていく」と危機感を表明した浜田邦夫弁護士・元最高裁判所判事。“危機”の内容について聞きました。(若林明)


幻想と思い込み

 ―どういう意味で日本の危機なのでしょうか。

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(写真)1936年生まれ。東京大学法学部卒業後、62年弁護士登録。82年日弁連常務理事。2001年5月最高裁判事(06年5月退官)。現在、弁護士事務所客員弁護士

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(写真)参院安保法制特別委員会中央公聴会に出席した6人の公述人。左から2人目が浜田氏=9月15日、国会内

 今日本で起こっていることは、日本の行く末を左右するような大きな問題です。戦争法の問題もそうですが大学の人文系を減らして武器生産につながる軍事研究をやれというあからさまな圧力があります。だから千人以上の大学の先生たちが学問の自由の問題としても立ち上がっています。理性にもとづいて現実を正確に見ないで、幻想と思い込み、偏見にもとづいた反知性の政治が行われており、それをサポートする一部の“ウルトラ右翼”のような人たちがのさばる風潮があります。

 単に戦争法の問題ではなく、自由で平和な日本を守る、民主主義社会を守るための“全面戦争”です。そこまで視野を広げて国民各層のエネルギーを持続させ、来年の参議院選挙、さらに次の総選挙で安倍政権に審判を下すというプランをもって動かないといけない。私もそういう思いで運動していきます。

法の秩序を無視

 ―戦争法についてはどうですか。

 今回の戦争法で日本にとってのデメリットはたくさんあります。一番大きいのは憲法と法の秩序をまったく無視している点です。結局ナチスがやったようなクーデター的手法で成立させました。麻生副総理が「ナチスのやり方を学べ」といいましたが、それが冗談ではない状況です。

 “現実的に他国から攻めてこられたら怖い、だからアメリカの助けを借りるため”ということだけですべてを正当化するのが、安倍政権の論理です。

 しかし、民主主義国家には国民主権などの原理にもとづいて国民の権利を守るための憲法があり、法の支配があります。それでこそ民主主義社会です。仮に他国が攻めてきたときにアメリカの力を借りるためには、それを無視してもいいという安倍政権の考え方は基本的に間違っています。

 この考え方の根拠となっているのが「抑止力」論です。安倍政権は今回の戦争法の「メリット」について抑止力が高まったことだといいます。私は政権を支持する人たちが、この“抑止力”というマジックワードに目をくもらされていると思います。安倍政権がいう抑止力は実在するのか。私はかなり疑わしいと思います。アメリカは自国民の死傷者を減らし、税金をセーブし、その肩代わりをしろといっているにすぎない。

 いざというときにアメリカが助けてくれるから戦争法をつくりアメリカの肩代わりをしようという言い方ですが、仮に、日中間で軍事的な問題があっても、アメリカが日本を助けてくれるとはかぎりません。いざとなると経済的理由で、中国の方を選ぶ可能性があります。

 「抑止力」の存否について、国民にもわかりやすく検証し、その実像を明らかにしていくことが必要です。

 ―そのほかのデメリットはどうですか。

 「平和国家」という国際社会でのイメージを失うことです。人道的な国際支援活動をしている人はもちろん、一般企業もテロの対象になる可能性が高まるなど大きな影響を受けると思います。一般の消費財の製造業やIT関連の技術を持っている企業は、今後の国際的に展開するうえで大きなマイナスのはずです。さらに日本の中で経営が厳しく、海外に出て行こうとする中小企業にもものすごく影響があります。

 大きな問題は徴兵制です。アメリカで徴兵制が無くなったときに兵隊になっていったのは経済的に恵まれない人たちです。実際に海外に派兵して紛争に巻き込まれたとき、被害者は日本の中でも弱い立場にある人の子弟です。

民主運動育てる

 ―戦争法のほかにも日本社会の危機というべき点はありますか。

 言論の自由への攻撃をはじめ“右傾化”といえる傾向が現実に起きています。SEALDs(シールズ)の奥田愛基くんに殺人予告が送られました。テロ国家のように日本の社会全体が変えられてしまう危機感を覚えます。

 公聴会での私の発言に対してもインターネット上で、「極左」「無国籍者」という誹謗(ひぼう)中傷が行われました。私が「極左」になると私より「左」だった人はどこに行ってしまったのか。「無国籍者」という非難は、つきつめれば、国を愛するなら安倍政権を支持しなさい、そうでないと日本人ではないという考えです。戦前の「あいつは『赤』だ」「あいつは『非国民』だ」という言い方と同じです。

 さらにNHKはじめ一部メディアの偏向の問題があります。日本の言論の自由、民主主義が問われる重大な問題です。

 ―これからの戦争法廃止の運動についてどう思いますか。

 私も国会前の行動に数回参加しました。新しい民主主義が始まった。それを育てる。今の戦争法に限らず原発の問題などいろんな問題で新しい民主的な運動を社会的に育てていくことが日本全体として必要です。安倍首相は時間がたてば反対はおさまると思っているようですが、国民をばかにした話です。だから運動を持続的にいっそう広げることが大事です。私もできることをやっていくつもりです。そこで私個人のマニフェスト=闘争宣言を掲げました。

 「自由で、平和な美しい日本を守ろう! 抵抗勢力は、知的なものに反発しこれを圧迫し、人の尊厳を冒す言動をし、また幻想を追って自らのそして世界の現実を冷静に見つめることを拒否する人々だ。第2次世界大戦終戦後70年で日本が築き上げてきた自由で豊かな社会、ユニークな国際的信用を大きく傷つけてはならない。この抵抗勢力がたどっている戦前の暗黒の日本への逆コースを阻止しよう! そのため、言論の自由、学問の自由そして憲法と法の支配をあくまでも守るために、皆で立ち上がろう!

 2015年10月2日 弁護士 濱田邦夫」

 私はこの考えにもとづいて行動したいと思います。


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