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2015年10月8日(木)

「亡国のTPP」安倍政権の暴走(下)

各国民の利益脅かす

多国籍企業中心の秩序

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 環太平洋連携協定(TPP)交渉の「大筋合意」を受け、オバマ米大統領は5日、「アメリカの価値観を反映した協定の交渉を完了した」と宣言しました。

 TPPは、貿易協定の枠を越え、多国籍企業中心の経済秩序を目指す協定です。米国が主導し、米国基準を押し付けるものです。安倍晋三政権は、「米国とともに新しい経済圏をつくる」ため、国内経済への甚大な影響を度外視して、「大筋合意」を急いだのです。

 TPPは、各国国民の利益と軋轢(あつれき)を起こさざるをえません。それを如実に示したのが、バイオ医薬品のデータ保護期間をめぐるせめぎ合いでした。

独占販売延長

 製薬大企業の利益を担った米国は、現状で多くの国が5年、日本が8年のところ、米国基準の12年を要求。5年を望むオーストラリアや途上国と「大筋合意」寸前まで対立しました。しかし、最終的には、実質8年で決着し、米国は期間延長に成功したのです。

 データ保護期間が長いほど、製薬大企業が高値で独占販売できる期間が長くなります。

 他方、医薬品を主に輸入するオーストラリアは、医薬品供給制度(PBS)に基づき、財政支出で薬価を抑制しています。データ保護期間延長で安価な後発医薬品(ジェネリック)の市販が遅れるほど、財政支出や患者負担が増えます。オーストラリア公正貿易投資ネットワーク(AFTINET)によると、延長1年当たり、2億500万ドルの支出増になるとする試算もあります。

主権と衝突も

 投資家対国家紛争解決(ISDS)の条項も、各国の主権と衝突する恐れがあります。進出先の国の制度や政策の変更で損害を受けたとする企業が、その国を相手取って訴訟を起こせる規定です。

 TPPでは、ISDS条項の適用対象からたばこが除外されたと報じられていますが、米国のたばこ企業がオーストラリア政府を訴えた前例があります。オーストラリアと香港の投資協定のISDS条項に依拠したもので、国民の健康に配慮し、たばこの包装デザインを規制する法律を不服としています。

 オーストラリアのエイジ紙(電子版)7月28日付によると、シンガポールで4年越しに行われている裁判のオーストラリア政府の費用が5000万ドルにのぼる見込みだといいます。

 韓国で2012年11月、CO2排出規制の「低炭素車協力金制度」の導入が突如取りやめになったことも、米韓FTA(自由貿易協定)のISDS条項が影響したと指摘されています。

 米国の消費者団体パブリック・シティズンは、国民の利益を脅かす内容が明らかになるにつれ、TPPは「大規模な反対に見舞われるだろう」と述べています。

 (おわり

 (金子豊弘、北川俊文が担当しました)


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