2015年9月2日(水)
東京海上日動 「不払い隠し」本店の指示
金融庁が公益通報受理
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18万件超の不払いを昨年5月に公表した東京海上日動が、実際は不払いを2005年に把握していたにもかかわらず、本店の指示で不払いを隠し、金融庁に虚偽報告を繰り返した―。同社関係者がこうした疑惑について金融庁に公益通報を行い、同庁が受理していたことが1日までにわかりました。
東京海上の保険金不払いは、02年4月から03年6月にかけて発生した「臨時費用」と呼ばれる保険金です。総額は40億円にのぼります。
05年当時、金融庁が損保各社に対し、支払い漏れとなっている案件の調査報告と、支払い漏れを契約者に案内し是正することを命じました。しかし、他社が是正をすすめる中、東京海上は1年3カ月分の約18万件を除外していたのです。
公益通報によると、「東京海上は05年10月時点で、今回の判明分を含む約30万件もの支払い漏れを把握していた」と告発。さらに、「支払い漏れとなっている約30万件にも及ぶ案件リストを全店に配布していながら、契約者への請求案内や対応をしないよう本店が指示。金融庁には、支払い漏れを68件などと報告した」としています。
公益通報は、契約者への請求案内を禁じた社内方針に抗議する社員らのメールなど、告発を裏付ける複数の文書とともに提出されています。通報は、同社の一連の行為が保険業法128条違反などにあたるとしています。
「不払い」について、東京海上の永野毅社長は昨年2月の会見で「不払いとの認識は今もない」と弁明。“不払い”が出た時期は、契約者が自動車保険本体とは別に「臨時費用」を請求しなければ支払わない方式だったため、請求しなければ払う必要がなかったと主張しました。
この釈明について公益通報は「永野社長のいう『運用の変更』は行われておらず、後付けの虚偽の説明だ」と証言しています。
昨年11月の参院財政金融委員会で日本共産党の大門みきし議員は、同社と金融庁の契約者ないがしろの姿勢を追及。18万件の不払いをめぐっては、今年5月末時点で2万6643件の支払いが完了していません。
公益通報 働く企業などやその役員・従業員の違法行為について、労働者が通報することです。通報者は公益通報者保護法により、企業などから不利益を受けないよう保護されなければなりません。金融庁の「公益通報保護規則」では通報者に対して、調査の状況や結果を「適宜」通知しなければならないとしています。