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2015年9月1日(火)

派遣法改悪案 廃案を

正社員化の道閉ざす

「同一業務」の規制廃止 直接雇用義務規定なくす

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 労働者派遣法改悪案は、派遣労働を「臨時的・一時的」な利用から、企業が恒常的に自由に利用できるように制度を根本的に変えるものです。従来の政府見解は投げ捨てられ、派遣労働者が願う正社員化の道が閉ざされます。このような法案は廃案にすべきです。 (昆弘見)


 これまで政府は、派遣を「常用雇用の代替にしない」「臨時的・一時的業務に限る」と言明してきました。いまも変えていないと言い張っています。

原則を投げ捨て

 しかし、改悪案がこの原則を投げ捨てていることは明白です。労働者派遣法の“生みの親”といわれる故高梨昌氏(信州大名誉教授、1985年の法制定当時の中央職業安定審議会長)の『詳解労働者派遣法』に照らしてみます。

 それによると、派遣労働は、派遣労働者を指揮命令して働かせる派遣先企業にたいする義務付けをしないと「適正な就業を確保することが困難」だといいます。その重要な義務付けが、派遣先の常用雇用の労働者を派遣労働者に置き換えできないように「代替防止」をはかるための派遣可能期間の設定です。

 注目されるのは、たんに派遣可能期間を設定すればいいのではなく、「同一の業務」に着目することが大事だと強調している点です。そうしなければ「派遣先は、派遣元事業主や派遣労働者を順次入れ替えること等により長期間にわたって労働者派遣の役務の提供を受けることになり、派遣先の常用雇用の代替防止の実効を期すことが困難となる」とのべています。

 この指摘の通り現行派遣法は、派遣可能期間を「同一の業務」で1年(最大3年)と制限し、それを超えて働かせる場合は、労働者を直接雇用することを派遣先企業に義務付けています(第40条の3)。

 しかも、この措置は派遣先にとって良いことだといっています。1年間継続して働いた派遣労働者は「必要な業務遂行能力を有していた」と考えるのが合理的であり、本人の希望に応じて優先雇用することは「派遣先にとって不当な負担とはならない」と。

簡単に切り捨て

 今回の改悪案は、一応「上限3年」という派遣可能期間を設定しています。根本は変わっていないと政府が言い張る根拠です。しかし、肝心の「同一業務」での規制を廃止しています。

 新たに3年ごとに「人」を入れ替えればいい、労働組合の意見を聞けば延長できる(聞くだけでいい)こととしました。まさに高梨解説が危惧している長期使用に道を開きました。「代替防止」の実効性を困難にする法の根幹の大改悪です。

 あわせて改悪案は、派遣期間を超えた派遣労働者に直接雇用を申し込む派遣先企業にたいする義務規定をなくしました。派遣先企業は、正社員募集の情報提供など無意味な「義務」があるだけで、派遣労働者を正社員として受け入れる義務はいっさい負わなくてもよくなります。

 派遣先企業が何の責任も負うことなく派遣を使えるようにする、リーマン・ショックのような経済危機に応じて簡単に切り捨てるのが改悪案のねらいです。

世界の常識にそう改正へ

 労働者派遣法改悪案は、「常用雇用の代替防止」という原則をなくし、派遣の恒常化をはかるものだということがこの間の国会審議を通じて鮮明になっています。自民党、公明党の与党はこのような問題だらけの法案を9月早々にも参議院で数の力で強行成立させようとしており、緊迫した情勢になっています。

 戦争法案阻止の全国的なたたかいと結んで派遣法改悪案を廃案にする世論と運動の強化が急務です。

 派遣労働が「臨時的・一時的」なものから恒常的に利用される労働になったら、これはもはや派遣ではありません。派遣の恒常化という安倍晋三政権がとろうとしている方向は、世界の雇用ルールに反するものです。

 この間の国会審議で塩崎恭久厚生労働大臣は、派遣労働の基本が分かっていないとしかいいようのない無責任な発言をくりかえしています。恒常的な業務に派遣を利用しても何の問題もないかのような答弁(8月21日の参院厚生労働委員会での辰巳孝太郎議員の質問に)は、その最たるものです。

 派遣は、雇い主から別の企業に派遣されて働く「間接雇用」という形態です。派遣労働者を指揮命令して使用し、もっとも恩恵を受けている派遣先企業が雇用責任を負わないという典型的な不安定雇用です。

 したがって派遣は「臨時的・一時的」な業務に限って認め、恒常的な業務には入れないことが鉄則です。そして正規雇用の代替防止のために派遣を利用できる期間を決めています。この期間を過ぎたら派遣先企業が派遣労働者に正社員化を申し出る、これが世界の常識です。

 恒常的な業務にまで派遣を広げるまさに派遣恒常化法は廃案にし、世界の常識にそった抜本改正に向かうべきです。


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