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2015年7月21日(火)

農村壊すな「聖域(畜産物・コメなど)」守れ

TPP「合意」 安倍政権の前のめり批判

国会決議違反だ 営農組織組合長

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 多国籍企業の利益追求の場となっている環太平洋連携協定(TPP)交渉。安倍晋三内閣はアメリカに追随し、“合意”に前のめりです。日米2国間協議では、国会決議で「聖域」としてきた農産物も関税削減や輸入枠の設定など譲歩をするといいます。農業生産の現場からは「将来展望がなくなり、農村集落が崩壊する。国会決議を守れ」との声があがっています。(中沢睦夫)


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(写真)「道路の草も刈っているよ」と、器具を紹介する(右から)板倉、伊藤、椎名の各氏=千葉県匝瑳市の堀川西営農組合

コメの輸入枠拡大

 TPP日米協議では、外国産米の輸入枠をさらに増やすことが話し合われています。アメリカは年間17・5万トンを要求し、安倍内閣は、年間5万トンから最大7万トンまでアメリカ向けに輸入、オーストラリアには8500トンを設定すると伝えられます。

 日本は、今でもミニマムアクセス米(最低輸入機会の輸入米)として年間77万トンもの外国産米を押し付けられています。(別項)

 「とんでもないことだ。国会決議はいったいなんなのだ。守らなくてもいいのか」。千葉県でも有数の米どころの匝瑳市で、農事組合法人「栄営農組合」で代表理事を務める伊藤秀雄さん(65)は、はき捨てるようにいいます。15人の農家で地域の60ヘクタールの水田を経営します。

 安倍内閣になって、生産者米価は暴落し、生産コスト割れしています。他産業並みの労賃が実現できる生産コストは、60キロ当たり全国平均で1万5300円です。千葉県では昨年の主食用米価が1万円を割りました。

 効率的という農事組合法人でも、赤字経営になる暴落ぶりです。

米価暴落を政府は放置

 原因は20万トンとも30万トンともいわれる“余剰米”の存在です。余剰分を買い上げ、価格の安定をすることもできます。しかし、安倍内閣は、放置したため需給が緩み、スーパーなどの「安売り」対象となり、生産者米価の暴落につながっています。

 外国産米の輸入枠の追加設定は、いっそう余剰米を増やし、需給安定を難しくします。

 主食用米は、生産調整をしています。匝瑳市では生産調整率が43%になります。

 農水省は、飼料用米を転作作物として助成金を付けて、増産を打ちだしています。3月に閣議決定した食料・農業・農村基本計画でも、10年後の目標を現状の10倍の110万トンに設定しています。

 いくら、飼料米に作付けを転換しても、TPPで畜産が激減し、輸入米を押し付けられれば、全く無駄となります。

 大規模になればなるほど大型機械が必要です。約60ヘクタールの稲作を中心に野菜もつくる農事組合法人「堀川西営農組合」の板倉豊代表理事(67)は、米価の暴落が続き、資材高がかさなり、農業の後継者を心配します。「コンバインなどは1500万円もする。修理代は年間200万円もかかる。機械代も肥料・農薬代も価格は下がらない」という板倉さん。3ヘクタールの野菜も含めて、年間通じた作業・販売をおこない、同法人の若い担い手の労賃を確保する試みもします。

 栄営農組合は、加工用米、堀川西営農組合は飼料用米の作付け中心に生産調整を達成しています。生産調整を達成した農家・組織への交付金削減も痛手です。主食用水田にたいし、10アール1万5000円の交付金が民主党政権時代にはありました。安倍政権は、半額に削り、2018年産からはゼロにします。

 「米は日本の主食だ。価格保障と所得補償をやって、安定供給に国は責任を持つべきだ」。椎名勝英前代表は、国の責任を強調します。

集落の環境維持できず

 椎名、板倉、伊藤の各氏は、地域の将来を心配します。

 「農家が体を悪くし、農機具が壊れたときに離農する姿を見る。やめた農家は、農地を農事組合法人に依頼することもあるが、われわれも地域全体は維持できない」

 道路の草刈りも地域でします。本来は行政がおこなう仕事です。放置すれば、日陰となり稲の生育に支障がでるため、農家が大型刃をつけて、刈り払っています。水路も農家が整備します。農水省の「環境支払い」事業も利用しますが、事務手続きが煩雑という難点があります。

 「ここは農業が最大の産業だ。TPPでさらに打撃を受けると、農業で生活ができない。住む人が減っていく。集落や道路の環境をだれが維持するのか」

いまでも77万トン輸入

 1995年4月から始まったミニマムアクセス米は、2014年10月までに1353万トンも輸入されています。主食用だけでなく、加工用、飼料用、食糧援助用などに使われています(図)。これらはほとんど国産米でも対応できるものです。稲作の発展に障害となっています。

 米の年間消費量は、主食用が年間780万トン、せんべい、みそ、しょうゆなど加工用の約20万トンを加えると、800万トンほどです。仮に5万トン以上を追加輸入すると、ミニマムアクセス米の77万トンと合わせ、需要量の1割以上を押し付けられることになります。

 TPP交渉の国会決議(2013年4月)は、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖の5項目は「聖域」として、TPP交渉から「除外」または「再協議」と明記しています。

 日本の主食と国土・環境保全にも役立っている優れた水田を壊す「特別輸入枠」の設定は、完全に国会決議に違反しています。

図

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