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2015年7月3日(金)

ギリシャ危機 海外資金が債務拡大

背景に欧州内の格差

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 ギリシャの債務問題では、“貸し手”に焦点をあてる必要があります。独仏などの大銀行です。欧州単一通貨ユーロの導入によって海外資金の出入りが激しくなり、2008年のリーマン・ショック後に債務を積み上げました。背景にあるのは経常収支が一貫して黒字のドイツと赤字を続ける南欧諸国との格差構造です。

 ギリシャがユーロを導入したのはドイツなどに2年遅れて2001年でした。実質国内総生産(GDP)は03年には前年比6・6%、アテネ五輪があった04年には5%と著しい伸びを示しました。成長を引っ張ったのは個人消費や固定投資など内需の伸びでした。好調を支えたのはドイツやフランスなど欧州の大国からの資金流入です。ギリシャがユーロ圏に入り、為替リスクがなくなったことが海外資金を呼び込みました。

借金で内需増

 もともとギリシャなどの南欧諸国は工業製品の輸出が少なく、経常収支が慢性的に赤字で、国内は資金不足という構造でした。それを補ったのが海外からの資金流入です。独仏などの大銀行は、ユーロ導入で高収益が見込まれる南欧諸国への貸し出しを増やしました。国際通貨基金(IMF)によると、南欧諸国などへの資本流入は2000年からリーマン・ショック前にかけて各国GDP比で15〜30%にのぼりました。

 南欧諸国が海外からの借金で内需を拡大したことで恩恵を受けたのは大国ドイツなどの輸出大企業でした。ドイツの経常黒字は01年からリーマン・ショック前の07年にかけて400倍以上という急激な伸びを示しました。

 しかし、南欧諸国では海外からの借金で消費や投資を増やし、輸入も増えたことで経常赤字が拡大し、対外債務が積み上がりました。ギリシャの経常赤字は01年から07年にかけて3倍に膨らみました。そして、いったん流入した資金はリーマン・ショック後、急激に流出。ギリシャの成長率は08年以降、マイナスに転落しました。

大企業に利益

 結局、ユーロは、強い輸出産業を持つドイツなどの大企業をさらにもうけさせる一方、ギリシャのように相対的に輸出競争力が弱い国に債務危機をもたらしました。ギリシャ問題の背景にはこうした欧州独特の構造があり、債務増加の原因をギリシャの「放漫財政」だけに帰すことはできません。

 輸出増加で“一人勝ち”といわれるドイツで賃金の伸びが抑えられ、労働者を犠牲にして輸出競争力を拡大したことも構造的な矛盾を広げました。

 ギリシャに危機をもたらした独仏などの大銀行はすでにギリシャへの債権の大半を整理しており、現在ギリシャが抱える公的債務の8割は欧州連合(EU)やIMFなどの公的機関や欧州各国政府です。大銀行が救済され、犠牲になっているのはもっぱらギリシャ国民です。 (山田俊英)

図
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