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2015年6月26日(金)

米TPA 上院可決

決めるのは各国のたたかい

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 【ワシントン=洞口昇幸】米上院(定数100)本会議は24日、環太平洋連携協定(TPP)交渉妥結の前提となる大統領貿易促進権限(TPA)法案を、60対38の賛成多数で可決しました。同法案はすでに下院で可決されており、週内にもオバマ大統領の署名を経て成立する見込みだと伝えられます。


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(写真)米議会の近くでTPP・TPA反対の声を上げる市民ら=23日、ワシントン(洞口昇幸撮影)

 TPAは、貿易交渉で大統領に強い権限を与えるもの。TPPの早期妥結を目指すオバマ政権は、TPA法案の承認を強く求めていました。TPPとTPAに反対する労働組合や環境保護などの諸団体と市民による米国内の運動の強まりを背景に、議会での審議が約2カ月間、迷走しました。

 上院は5月22日、TPA法案を、TPPなどで雇用を失う労働者を支援する「貿易調整援助(TAA)」法案と抱き合わせでいったん可決しました。しかし、下院が民主党の反対でTAA法案を否決したため、共和党は2法案を分離し、上下両院で改めて採決する方針に転じました。

 オバマ大統領はTPA法案と併せ、TAA法案を成立させる意向です。上院は24日、TPA法案に続きTAA法案を可決しました。下院では民主党幹部らが同日、TAA法案の賛成に回ると表明。TAA法案が週内に両院を通過する可能性が高まり、大統領がTPA法案に署名する環境が整いつつあります。

 TPPに反対する米消費者団体パブリック・シチズンは23日、声明を発表。オバマ政権などの集中的な政治宣伝にもかかわらず、TPPのような自由貿易協定に米国民の多数が反対していると強調。労働や環境、食品安全の基準などを脅かすTPPの中身が公開されれば、TPP反対の米世論がさらに強まり、上下両院議員の行動と責任が問われるだろうと指摘しています。

TPP 国民との矛盾消えず

 大統領貿易促進権限(TPA)は、大統領が結んだ貿易協定の議会審議を速やかに行う手続きを約束するものです。大統領が議会の要求を満たして交渉した限りで、議会は協定の修正を求めず、承認か否かだけを表決します。

 TPAがないと、協定の修正や再交渉を求められる可能性があります。現在の環太平洋連携協定(TPP)交渉でも、各国の合意がそのまま協定になる保証がなく、米国政府の交渉当事者能力が疑われていました。

 TPA法案の上院可決を受け安倍晋三首相は「アメリカとともにリーダーシップを発揮して早期の(TPP)交渉妥結を目指していきたい」と述べました。甘利明TPP担当相も「夏休みに入るぎりぎり前に12カ国の合意を図り、最終的な署名に至るという手順を踏んでいきたい」と語りました。

 しかし、TPAがありさえすれば、TPP交渉がすぐさま合意に達するわけではありません。例えば、知的財産権の分野をみても、新薬臨床実験データの保護期間の大幅延長を求める多国籍製薬大企業の身勝手な要求が各国国民の生命・健康と激しい矛盾を起こしています。各国の立場の違いはその反映です。それは、TPAがあれば解消されるわけではありません。

 TPPが国民を犠牲にして多国籍大企業の利益を追求するものであることがますます明らかになっています。それを秘密裏に交渉していることへの怒りも広がっています。TPP推進役を自任する米国でさえ、労働組合や市民団体の反対運動が強まっており、地方議会で反対決議が採択されています。

 TPP交渉の帰すうを決するのは、TPAではなく、多国籍大企業の横暴から各国国民を守るたたかいです。

 (北川俊文)


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