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2015年6月7日(日)

徹底批判!戦争法案

インド洋“出撃”途上に自殺 07年 隊員の犠牲 新たに判明

“戦死の備え” 法案で現実味

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 インド洋・イラク派兵の自衛官54人が自殺―。戦争法案を審議する衆院安保法制特別委員会(5月27日)で、日本共産党の志位和夫委員長に対する防衛省の答弁は、大きな衝撃を与えました。ただ、ここでは触れられなかった深層があります。

 (竹下岳)


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(写真)任務中に乗組員が自殺したことを明記している海自報告書

 「54名が帰国後の自殺によって亡くなられております」。防衛省の真部朗・人事教育局長は同日の委員会で志位氏にこう答弁していますが、その真偽を疑わざるをえない、1冊の報告書があります。

 「協力支援活動等実施報告」(2007年11月22日付)。テロ特措法に基づき、米軍の「対テロ」戦争を支援するためインド洋で他国艦船への洋上給油などを行った海上自衛隊第6護衛隊が作成したもの。本紙の情報公開請求に対して、防衛省が一部開示しました。

 それによれば、インド洋に向けて07年7月13日に佐世保基地(長崎県)を出港した護衛艦「きりさめ」艦内で同月30日、「乗員の死亡事案が発生」していたのです。

 「死亡事案」とは何か。同報告書は「本行動中に『きりさめ』にて自殺による死亡事案が生起した」と明記しています。つまり、「帰国後」どころか、“出撃”中に自殺者が発生していたのです。

 では、この「事案」は、防衛省が答弁した自殺者「54名」に含まれているのか。同省に問い合わせましたが「故人の特定につながるので、詳細は差し控える」として、回答を拒みました。

 ただ、ここでの問題は、答弁の真偽を問うことではありません。

 報告書によれば、死亡事案が発生した翌日、「きりさめ」は隊を分離し、8月1日、「御遺体を日本へ輸送するため」、ある港に停泊した後、3日までに先任部隊から任務を引き継いだとしています。つまり、乗組員の自殺という痛ましい事件が起こっても、予定通り「対テロ」戦争支援を開始したのです。対米支援最優先の非情さを痛感させられます。

 もう一つ注目されるのは、報告書が、「きりさめ」艦内には線香もなく、十分な弔意を示すことができなかったことを挙げ、こう記していることです。

 「今後、海外へ派遣される部隊の司令部等においては、乗員が何らかの形で死亡する場合に備え、必要物品の搭載をしておくべきと痛感した」―。ここで提起された“戦死”への備えが、戦争法案で一気に現実味を帯びることになります。

自衛隊員の犠牲 「戦闘現場」リスク拡大

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(写真)隊員死亡への備えを求めたインド洋派兵部隊の報告書

 テロ特措法に基づく自衛隊の洋上給油は、米国による地球規模の「対テロ」戦争の一角をなすものでした。

 ただ、その活動は現に戦闘が行われておらず、活動の実施期間中を通じて戦闘が行われない「非戦闘地域」に限られていました。少なくともインド洋に限って言えば、死者の発生自体、想定していなかったことが、「きりさめ」死亡事案から浮かび上がってきます。

 しかし、戦争法案で自衛隊は「戦闘地域」に踏み込み、現に戦闘が行われる「戦闘現場」の近くで米軍への輸送・補給などの支援を行います。戦闘による死傷に加え、任務拡大に伴う隊員の肉体的・精神的負担の増大で、自殺リスクの拡大も予想されます。

 日本共産党の志位和夫委員長は5月27日の衆院安保法制特別委員会で、こう追及しています。「自衛隊の活動領域を広げたら、(自殺の問題が)もっと深刻になる」

 自衛官トップの統合幕僚長を務めた斎藤隆氏は5月26日、日本記者クラブでの記者会見で、戦争法案に賛成の立場から、こう述べています。

 「国家国民に対して、戦死者にどう向き合うか、そろそろ考えておく必要があるだろう。(戦死)ゼロということはありえない」「国家に殉じた人たちの合祀(ごうし)の問題をどうするか、考える必要がある。この問題は、(1991年のペルシャ湾)掃海のころから、すでに始まっていた」

 国民が「戦死」を冷静に受け止め、国はその弔いまで決めておけ、という発言です。

 自衛官は任官の際、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努める」ことを宣誓します。

 ただし、その前段に「日本国憲法及び法令を遵守(じゅんしゅ)」するとの文言があります。

 国会で憲法学の権威がこぞって「違憲」と断じた(4日、衆院憲法審査会)戦争法案に基づき、国民の生命や平和な暮らしとは無縁の米軍の戦争支援のために、末端の自衛隊員の心と体、そして命を犠牲にさせられる―。こんなことが、許されるはずがありません。


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