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2015年5月12日(火)

「戦争立法」 「平和安全」で本質隠す

制限なき自衛隊派兵に道

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 自公両党が11日、正式合意した「平和安全法制整備法」と「国際平和支援法」は、「平和」「安全」にほど遠い、憲法9条破壊の「戦争立法」そのものです。法案は要綱などを含めて400ページ超。これに無数の関連法の改定が加わります。内容も重大で、膨大・多岐にわたる「戦争立法」の問題点を整理しました。


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(写真)400ページを超える膨大な「戦争立法」の法案

審議時間の短縮狙い複数法案を一括処理

 与党協議では、自衛隊法を含めて、10本もの既存の海外派兵法制の改定で合意しました。政府は、これらの「改正」点だけを抜き出して一本化した「一括法」として国会提出する方針です。

 これまで、1本だけで複数の国会、さらに審議時間も100時間を超えるような海外派兵法を一つの特別委員会に付託し、「一括」処理することで、審議時間の短縮を狙う考えです。

 昨年、医療や介護を全面的に変質させる「医療・介護総合法」が自公の賛成で強行成立しました。同法も分野が異なる医療・介護法の改悪を「一括」で処理したものです。

 国会軽視、国民への説明責任放棄の、安倍政権特有の手法であり、法案の中身もさることながら、審議の手法そのものも問題です。

海外派兵恒久法(国際平和支援法案)

米軍主導のあらゆる多国籍軍への自衛隊派兵を、名ばかりの「国会承認」で政府に白紙委任するための法案

 廃止されたイラク特措法やテロ特措法をもとに作られた新規立法です。

 その目的は、国連安保理決議があるものだけでなく、安保理決議もなくイラクへの先制攻撃を行った有志連合軍のように、米軍主導のあらゆる多国籍軍への参加を、その都度、特措法をつくることなしに可能にすることです。参加の判断を政府に白紙委任するための法案です。

 しかも、従来の特措法では自衛隊の活動区域は「非戦闘地域」に限っていましたが、恒久法では、自衛隊が「戦闘地域」まで踏み込んで多国籍軍の後方支援を行います。

 近傍で銃撃戦が行われる「戦闘現場」になれば、活動を「休止」「避難」するとしていますが、戦場に取り残された米兵などの「捜索・救助」であれば、「戦闘現場」でも活動を継続します。

 また、後方支援の項目に、従来はできなかった武器の輸送や弾薬の提供を含んでいます。

 与党協議では、国会での「例外なき事前承認」が合意されましたが、承認までの期間は衆参それぞれ7日以内に限られています。

 しかも、承認の対象になるのは「対応措置」であり、「基本計画」は対象になりません。さらに、作戦の詳細を定めた「実施計画」は公表されません。

一括法(平和安全法制整備法案)

既存の自衛隊法、海外派兵法から憲法の“歯止め”を取り除き、「平時」から集団的自衛権の行使にいたるまで、あらゆる事態で米軍を支援するための法案

自衛隊法改定

 自衛隊法の改定は多岐にわたりますが、主に四つの点が強調されています。

 (1)米軍等の武器等防護 自衛隊の武器が攻撃された際、これを防護するために武器を使用する「武器等防護」の規定を、米軍など他国軍隊にも適用します。「我が国の防衛に資する活動」以外にも、「共同訓練」も含んでいます。対処するかどうかは現場の自衛隊指揮官の判断に委ねられます。政府も知らないうちに「平時」から交戦状態に移行する危険があります。

 (2)在外邦人保護 在外邦人の「警護」「救出」を理由に、他国領土で「妨害排除」のための武器使用を認めています。

 (3)「平時」における米軍への物品・役務の提供 自衛隊が「平時」から米軍基地や部隊の警護を行います。自衛隊を米軍の「警備員」にする内容です。

 (4)国外犯処罰規定 海外派兵で上官の命令に背いた自衛官を処罰する規定。自衛官の著しい人権侵害につながります。

重要影響事態法(現・周辺事態法)

 周辺事態法は、「日本周辺」で発生した事態で活動する米軍の後方支援を行うもの。改定で「日本周辺」を削除し、地球上どこでも米軍の後方支援を可能にします。米軍以外の軍への支援も追加し、日米安保条約すら大きく逸脱しています。

 しかも、海外派兵恒久法同様、「戦闘地域に行かない」という“歯止め”を撤廃。「捜索・救助」であれば戦闘現場でも活動を継続します。

 さらに、支援内容も派兵恒久法同様に拡大。従来はできなかった、戦闘発進中の米軍機への給油も含みます。

船舶検査法

 周辺事態法改定や派兵恒久法新設に伴う改定。地球規模で、武器を運んでいる疑いのある船舶への立ち入りを可能にします。

PKO法(国際平和協力法)

 国連平和維持活動(PKO)への参加の根拠になっている同法の改定は、主に三つの内容を含んでいます。

 (1)治安維持任務 従来、自衛隊のPKOは施設建設や停戦監視、司令部業務に限っていました。「一括法」では、これに加えて「特定の区域の保安のための監視、駐留、巡回、検問及び警護」を追加。武器による威嚇や発砲の可能性が高い治安維持任務を追加しました。

 (2)任務遂行のための武器使用 これに伴い、従来は「自己防護」に限っていた武器使用基準を、任務遂行=「業務を妨害する行為を排除」するための武器使用を追加しました。敵対勢力との交戦も含みます。さらに、同じPKOに属する他国部隊の戦闘に加担する「駆け付け警護」も追加しました。

 (3)「非国連統括」型活動(国際連携平和安全活動) 国連安保理決議に基づいているものの、国連が主導していない活動への参加を追加。3500人もの死者を出し、さらに多数の民間人を殺傷したアフガニスタンのISAF(国際治安支援部隊)のような活動に道を開きます。

 これらの改定により、形式的には「停戦」していても、実際は混乱が続く地域に自衛隊が乗り込み、戦闘に参加し、「殺し、殺される」実際の危険性が出てきます。

事態対処法制

 歴代政権が「憲法上、できない」としてきた集団的自衛権の行使を容認した昨年7月の「閣議決定」に基づく措置。自衛隊法の主任務に「存立危機事態」(他国に対する武力攻撃)への対処を明記。日本に対する武力攻撃や武力攻撃予測事態への対処を定めた「武力攻撃事態法」も改定し、同法の関連法である「米軍行動関連措置法」「特定公共施設利用法」「海上輸送規制法」「捕虜取扱い法」も、日本の防衛とは無関係の集団的自衛権の行使で発動できるようにします。

 対処の範囲に地理的限定はなく、時の政府が中東ホルムズ海峡での戦乱なども「存立危機事態」だと認定すれば、自衛隊が海外派兵して、憲法上禁じている「海外での武力行使」を可能にします。

国家安全保障会議設置法

 第2次安倍政権で設置された“戦争司令塔”=日本版NSCの権限を強化し、(1)存立危機事態(集団的自衛権の行使)(2)重要影響事態(3)国際平和共同対処事態(米軍主導の多国籍軍による戦争)への派兵を審議事項に加えます。


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