2015年3月16日(月)
きょうの潮流
先週来日したドイツのメルケル首相が歴史認識について述べた言葉をドイツの主要紙が解説しています。痛烈です▼一つは、ナチスの戦争犯罪をめぐり「過去の総括が(欧州の)和解の前提になっている」という発言。南ドイツ新聞は、メルケル首相が「公然たる批判は逆効果」と考えて、安倍晋三首相に「礼儀正しい批判を試みた」と伝えました。安倍首相のことは「戦争犯罪を相対化しようとしている」と紹介しました▼メルケル氏は「ドイツには、物事をその名で呼ぶ覚悟がある」とも述べました。このわかりにくい表現を、フランクフルター・アルゲマイネ紙は「行間に込められた警告」と読み解きました。侵略という言葉すら消し去ろうとする安倍首相への警告だったのです▼たとえドイツの首相が誰であっても、安倍首相には物を言ったでしょう。ドイツでは街の各所に、そこでナチスがいつ何をしたかを記した「警告碑」があります。過去を「忘れるな」と警告する碑です▼こうした社会が簡単につくられたわけではありません。ネオナチだけでなく、普通の市民の中にいまも人種差別をする人がいます。本紙2月24日付国際面「女性の目アラカルト」ではベルリン在住の筆者が地下鉄で見知らぬ女性にののしられた体験を書いています▼だからこそ国民を代表する政治家の役割が決定的です。ドイツでは「戦争犯罪を相対化」する人物は政治家として失格です。ドイツ人の目には、過去を消そうとする安倍首相の姿は異様に映ったようです。