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2015年1月29日(木)

主張

安全保障法制整備

なし崩し拡大発言は重大だ

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 安倍晋三政権は、集団的自衛権の行使容認を柱にした「閣議決定」を具体化する安全保障関連法案について、与党協議などを経て、5月の連休明けに国会に提出しようとしています。見過ごせないのは、安倍首相が、過激組織「イスラム国」を名乗るグループによる日本人人質事件と絡め、海外で危害に遭った日本人を自衛隊が救出できるようにする法案も含めて提出する考えを示していることです。「海外で戦争する国」づくりへの危険ななし崩し的拡大です。

自衛隊の救出は非現実的

 安倍首相はNHKのインタビュー(25日)で、人質事件に触れた上で、「このように海外で邦人が危害に遭った時、その邦人を救出するために自衛隊が持てる能力を十分に生かすことはできない。そうした(自衛隊による邦人救出のための)法制も含めて今回法整備を進めていく」と語りました。

 しかし、今回の人質事件のようなケースでの自衛隊の日本人救出活動は、安倍政権が昨年7月に行った「閣議決定」をどう読んでも可能にすることはできません。

 「閣議決定」は、自衛隊が「武器使用を伴う在外邦人の救出についても対応できるようにする」とし、武器を使用した海外での救出活動に初めて踏み込みました。一方で、自衛隊の活動は「領域国政府の同意が及ぶ範囲、すなわち、その領域において権力が維持されている範囲」としました。

 政府はこれまで海外での自衛隊の武器使用について、国家や「国家に準ずる組織」に対して行った場合は、憲法9条が禁じる武力行使に当たるとし、自衛隊員の自己防衛などに限定してきました。これに対し、「閣議決定」は、領域国政府が同意しその権力が維持されている領域内であれば、敵対する「国家に準ずる組織」は存在しないと決め付け、自衛隊の救出活動などの「警察的な活動」でも武器使用は可能としたのです。

 今回の人質事件はこうしたケースにも当てはまりません。事件は、「イスラム国」の支配地域で起こっており、領域国政府であるシリア政府やイラク政府の「権力が維持されている範囲」とするのは無理があります。こうしたケースでの武器使用は、「閣議決定」の立場からしても、憲法9条の禁じる武力行使に抵触することは明白です。

 そもそも武器を使用した救出活動に道を開く「閣議決定」自体が大問題です。海外で人道支援に取り組むNGOは、自衛隊による救出は現実的ではなく、「近年の紛争の現場は非常に複雑で、誰が『敵』で誰が『味方』なのかを見極めることは、困難」で、「外国軍も武装グループからの攻撃の対象となり、攻撃に対する防御が攻撃に転じて、エスカレートしていく」(日本国際ボランティアセンター提言)と批判しています。

「閣議決定」の撤回直ちに

 安倍首相が、「イスラム国」に空爆などを行っている米軍主導の「有志連合」に対し「後方支援は武力行使ではないから、国連の決議がある場合、そうではない場合も、憲法上は可能」と語ったことは極めて重大です。従来禁止されてきた「戦闘地域」での自衛隊の米軍支援に道を開く「閣議決定」の危険性を浮き彫りにしています。「海外で戦争する国」づくりのための「閣議決定」を直ちに撤回し、法制化は中止すべきです。


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