2014年12月17日(水)
変わる障害福祉サービスの仕組み
利用計画作成わずか
「職員は疲弊」
障害児者が障害福祉サービスを利用する際の仕組みが、来年4月から変わります。利用計画の作成が義務付けられるのです。ところが、計画作成が済んだ障害児者は全国で5割程度にとどまっています。問題は何か。現場をみました。 (岩井亜紀)
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「寄り添いながら一人ひとりのペースに合わせた支援から、事務作業中心の支援にせざるを得ない。いま、激変を感じている」―。
東京・多摩地域の地域活動支援センターのセンター長、石井あゆみさん(仮名)は、こう強調します。
同センターは、主に精神障害者を対象に相談活動を中心に行っています。必要に応じて自宅へ訪問し家族も含めた支援など手厚いもの。これに膨大な事務作業が加わりました。
足りない専門員
来年4月から、障害児者が居宅介護や日中活動で事業所に通うなど障害福祉サービスを利用するには、相談支援専門員によるサービス等利用計画の作成が必要になります。相談支援専門員は、介護保険制度のケアマネジャーのような役割を期待されています。
サービス等利用計画作成が始まった2012年から同センターは、この事業を自治体から委託されました。利用者は2倍に。訪問・連携や事務量が増える中で、これまで同様のきめ細やかな支援をめざして努力していますが、「職員は疲弊している」と石井さんはいいます。
東京都の障害福祉サービス利用者は6万1045人。利用計画をつくる事業所が264カ所で、1事業所あたり231人もの利用計画を作成しなければなりません。
厚生労働省の調べによると、利用計画作成済みの障害者は50%、障害児は51・6%(9月現在)。石井さんは「事業所も相談支援専門員も足りていない」と話します。
この背景について障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会の家平悟事務局次長は「報酬単価が低いうえ、計画作成時と作成から1カ月後(新規作成時3カ月間のみ)または6カ月後等のモニタリングに報酬がつくだけ。これでは専門員の常勤配置が困難だからだ」と強調します。
「絵に描いた餅」
全国障害者問題研究会副委員長で立正大学の中村尚子准教授は、幼児の場合、障害の有無が定かでない時期に利用計画をつくることに母親は戸惑うといい、「障害児相談支援に本来備わるべき機能は、成人期のものとは大きな違いがある」と強調します。
石井さんらはモニタリング時に限らず、必要があれば個別に訪問。「毎年赤字決算で、不足分は法人内で調整している」と訴えます。
家平さんは「相談態勢を整えるだけの報酬がないままでは、機械的な計画作成だけになってしまい、絵に描いた餅だ」と批判します。
こうした事態を受け厚労省は、来年度に限って各市町村がサービス等利用計画の代替プランをつくるよう指示しました。
東京都足立区の障害福祉課の二見清一さんは、自治体の事務負担が増えることを懸念。その上で、「本来は、障害福祉サービスを適切に利用できるよう、本人のニーズなどを踏まえて利用計画をつくることが求められていたはず。報酬単価の抜本的な引き上げが必要だ」と強調します。