2014年11月27日(木)
全米に抗議拡大
黒人青年射殺 警官不起訴 人種差別に怒り
州兵増派で緊張
【ワシントン=島田峰隆】米中西部ミズーリ州ファーガソンで8月に黒人青年(当時18歳)を射殺した白人警官が不起訴になったことに対する怒りの抗議行動は25日、全米各地に広がりました。白人警官による黒人を狙い撃ちにした人種差別的な対応はファーガソンに限ったことではありません。オバマ大統領は「米国全体の問題と認識する必要がある」と強調しています。
ファーガソンでは大陪審が不起訴を発表した24日夜から、住民が人種差別だとして抗議行動を続けています。一部は暴徒化して警官隊と衝突し、25日までに同市周辺を含めて80人以上が逮捕されました。ミズーリ州のニクソン知事は25日、現場に派遣する州兵の数を2200人以上に増やすと発表し、緊張が高まっています。
一方、抗議行動は25日、首都ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルスなど各地に広がり、米メディアによると30以上の州で行動が起きたもようです。
ファーガソンの事件に各地の住民がこれほど敏感に反応する背景には「警官による黒人青年の殺害は東海岸から西海岸までよくあることであり、黒人の親にとっては不安の原因になっている」(ニューヨーク・タイムズ紙)ことがあります。
米独立系調査機関プロプブリカは先月、政府統計に基づいて、2010年から12年に15〜19歳の青年が警官に射殺された1217件を調査した報告書を出しました。それによると、警官によって黒人青年が射殺される危険性は白人青年の21倍になっています。黒人青年を射殺した警官のほとんどは白人です。
オバマ大統領も24日夜の緊急会見で「法律があまりにも頻繁に差別的な形で適用されている」「米国のあまりにも多くの都市で、法執行機関と黒人の共同体の間に深い不信感がある。人種差別の遺産だ」と指摘せざるを得ませんでした。
カリフォルニア大学バークリー校ハース研究所の所長で人権問題の専門家のジョン・パウエル氏は25日、問題は差別に基づく「米国社会の深い分断だ」とし、「われわれが目撃しているのは米国の組織的な欠陥の反映だ」と指摘しました。同氏は、黒人の地域共同体との協力など警官への効果的な訓練、法執行機関の要員の多様化、住民が警察の方針を検討できるようにすることなどを提案しています。